がんに対する取り組み について
がん医療も近年大きく進歩と変化をみせています。手術でがんを取ってしまうだけで終わりではなく、いかに再発させないか、また万一の再発をいかに早めに発見し対処するかというアフターケアが大切になっています。こうしたアフターケアは手術を行った高度医療施設でのみ行うわけではなく、地域の「かかりつけ医」が手がける場合もあります。地域の医院であれば、通院の手間、時間を大きく節約することも可能です。当院では、がんセンターや大学病院で修行を積み泌尿器科で扱うがんの専門知識を持った医師がアフターケアを担当しますので、いつでもご相談ください。
泌尿器科で対応する主ながん
泌尿器科の扱いになるがんとして、前立腺がんと膀胱がんが近年増加傾向にあります。
中でも前立腺がんは、ある程度高齢化してから発症し、比較的おだやかに進行することが多い男性特有のがんです。初期に症状がほとんどなく進行してからも前立腺肥大などの症状と同様ですので、鑑別していく必要があります。
一方、膀胱がんは3対1と男性に多いがんで、痛みなどの症状が無く突然血尿が出て気づくことの多いがんです。膀胱がんは喫煙習慣でリスクが高くなります。早期に発見すれば治療しやすいのですが、再発も多いため、治療後も経過観察していく必要があります。
腎がんでは、超音波検査などの画像検査の普及により、小径の腎がんでの発見が高まっています。4cm以下の小径腎がんでは、ロボット補助下腎部分切除術や冷凍療法、経皮的ラジオ波焼灼術など低侵襲治療の提案が可能になっています。
泌尿器科で対応するがんの治療
がんはできる場所や、どんな細胞ががん化するかによって治療法が大きく異なってきます。また、現在のがんの進行状況や浸潤(となりあった器官へがんが拡がること)や転移(離れた場所のリンパ節や臓器などにがんが飛び移ること)の状況によって、最適の方法を選んで治療計画を立てることになります。CT検査やMRI検査、血液検査、超音波検査など様々な検査を行い、時には内視鏡などで細胞を採取して病理検査を行ったりすることもあります。
前立腺がんは、比較的高齢者に多いがんで、ほとんどの場合進行がゆっくりとしているため、手術に至らず、薬によってコントロールしていくケースが多いのですが、転移が見られることもあり、見つかった際には集学的な(ランマーク治療・放射線治療・抗がん治療などの組み合わせ)治療が必要になります。
膀胱がんは早めに見つかった場合、尿道を経た内視鏡的手術で治療可能ですが、筋層浸潤が見られる場合には膀胱摘出などの手術となります。また、転移が見られる場合は化学療法を中心に治療していくことになります。
いずれの場合でも、膀胱がんは再発の多いがんの一つですので、治療後も膀胱内の内視鏡検査などの経過の観察が大切になってきます。
腎実質にできる腎臓がんは早期発見の場合、手術でがんを摘出することになります。近年では腎臓の機能を残すために、ロボット支援下でがんの部分だけを部分的に摘出する手術なども普及してきました。進行して転移が見られるケースでは化学療法を中心に治療を行います。化学療法では分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが選択されます。いずれも副作用がありますが、がん治療医による適切な副作用メンテナンスを行いながら治療の継続をしていくことが重要です。
なお、腎臓がんは10年以上経過してから再発することもあります。治療後の経過観察も大切です。
前立腺がん
前立腺がんは、10万人に154人程度と男性のがんの中では2019年の統計で罹患者数がトップとなっているがんです。高齢者に多く発症し、比較的進行の緩やかながんです。特に前立腺液に含まれるPSAというたんぱく質の一種がどの程度血中に溶け出しているかを調べるPSA検査で早期発見が可能です。
中には急激に進行する前立腺がんもあります。前立腺がんは、45歳を過ぎてから少しずつ増え始め、55歳を過ぎると急激に増加していきますので、50歳を過ぎたら定期的にPSA検査を受けておくようにしましょう。
治療とフォロー
PSA検査の数値が高い場合や、排尿障害などの症状があらわれている場合、前立腺生検で細胞を採取し、がんの確定診断と細胞の悪性度の判定を行います。悪性度や転移の有無に年齢の要素を加えて治療方針を決定していきます。
悪性度が低い場合、進行がおだやかなケースが多いため、少量のがんの場合は、しばらく慎重に経過観察となることもあります。悪性度が高い場合にはロボット支援手術など、侵襲の少ない方法での手術を選択するか、放射線治療を検討します。
転移のある場合の治療は全身薬物療法(ホルモン療法・抗がん剤療法・分子標的薬療法・免疫療法)となります。前立腺がんは男性ホルモンによって増殖するため男性ホルモンの分泌や働きを抑制する薬物によって治療を行います。
膀胱がん
膀胱がんは2019年の統計によると人口10万人あたり18.5例程度、年間2万3千人強が新たに罹患するがんです。早期には無症状のことも多いのですが、痛みもないのに突然血尿が出て受診して発見されることが多くなっています。進行すると膀胱全摘出になることが多く、日常生活の質も大きく低下してしまいます。何らかの症状を感じたら受診するようにしてください。
診断と術後のフォロー
まずは尿細胞検査によって、尿中にがん細胞が混ざっていないか確認し、陽性の場合、超音波検査や膀胱鏡検査、CT検査などによって尿管や腎盂にがんがないかなどを調べます。
膀胱鏡検査では、膀胱内の粘膜の状態を詳細に確認し、がんの位置や大きさ、拡がりなどを確認します。
筋層にがんの浸潤が無い場合は内視鏡によってがん細胞を摘出する手術を行います。比較的簡単に治療できますが、一度膀胱がんを起こすと再発しやすいため、定期的な経過観察が大切です。
筋層にがんが浸潤している場合は、膀胱の全摘出になりますが、転移が認められる場合は薬物療法を選択することになります。
腎臓がん
国立がん研究センターの統計では腎臓がんは腎・尿路がん(膀胱を除く)として集計されており、10万人あたり24人強、年間約3万人程度が罹患することが報告されており、また近年増加傾向にあります。発症リスクは喫煙との関連が指摘されている他、肥満や高血圧なども関係すると考えられています。定期検診の腹部超音波検査によって早期発見が可能となっていますので、定期検診は必ず受診するようにしてください。
治療とフォロー
腎臓がんは、基本的に手術による治療が中心となります。特に近年では腎機能を維持することができ、身体への侵襲も少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術などを選択するケースが多くなってきています。手術が困難な場合、冷凍療法:クライオ(皮膚から腎臓に針を到達させてがん細胞を凍結してしまう治療法)、経皮的ラジオ波焼灼術等を行うことがあります。転移がある場合は分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬での薬物治療が選択されるようになっています。腎臓がんが発見された場合、当院と連携する高度医療施設に紹介して速やかに治療を受けることができることができます。
精巣がん
精巣がんは10万人に1人程度と稀少ながんの一種ですが、20~30歳代の若い男性に発症することが多く、進行も速いため、左右の精巣のサイズが異なってきた、精巣の硬さが以前と異なってきたなどのサインを感じたら早めに受診することが大切です。
治療とフォロー
精巣がんの疑いがある場合は、まずは触診や超音波検査などによって精巣の状態を調べます。精巣内に留まり転移の可能性は少ないがんですが、手術によって精巣を取り除いた場合、妊孕性(妊娠させる能力)を維持するために精子の採集による冷凍保存や精巣から直接精子を取りだして保存する方法などを慎重に検討します。検査によって精巣がんが発見された場合、当院では連携する高度医療機関を紹介し、スムーズに治療が受けられるようにしています。