尿の濁りについて
尿の色は健康のバロメーターと言いますが、尿の透明度も同じように身体の様子を知らせるバロメーターとなっています。健康な尿は黄色がかった透明なものです。尿の感染や寄生虫(乳び尿)など何らかの疾患があると、尿が白く濁ってしまうことがあります。
尿が濁る原因
食生活
食生活の偏りによって尿が濁ることがあります。ココアやバナナ、ホウレンソウといったシュウ酸が多く含まれる食品、動物性たんぱく質の摂り過ぎによって、尿中にシュウ酸カルシウムの結晶ができると尿は白濁します。シュウ酸カルシウムの結晶は結石の原因物質の一つですので食生活の改善が必要ですが、尿の白濁は疾患というわけではありません。
女性特有の濁り
女性の場合、おりものが混ざって尿が濁って見えることがあります。また月経の出血が混ざっても濁って見えることがあります。一時的に濁っていてもすぐにもとの透明な尿に戻って繰り返さないようでしたら特に問題はありません。しかし、繰り返したり濁りが続いたりするようでしたら膀胱炎の可能性がありますのでお早めにご相談ください。
性行為などで起こる性感染症
性行為によって尿道や膀胱が細菌などに感染することで、尿が濁ることがあります。特に近年では淋菌やクラミジアなどの性感染症(STD)が、若い世代を中心に増加している傾向があります。治療しなければ感染を広めるだけでなく、将来の不妊に繋がる可能性もあります。感染が分かったら、必ずパートナーとともに治療を受けましょう。
血尿による尿の濁り
血尿は炎症や結石などによって、尿路のどこかに傷がついた状態で起こります。血尿には、肉眼ではっきり確認できる肉眼的血尿と、尿検査ではじめてわかる顕微鏡的血尿があります。肉眼では血尿に見えなくても血が混じって尿が濁って見えることもあります。
尿の濁りを起こす主な疾患
尿の濁りの原因疾患としては、尿路の細菌感染による尿道炎や膀胱炎、尿路結石の他、前立腺がん、腎がん、膀胱がんなど尿路のがんが進行した場合など様々なものが考えられます。
腎臓結石・尿管結石
尿路結石の多くは腎臓ですが、時に膀胱にできることもあります。腎臓でできた結石が移動する時、尿管の細くなっている部分に引っかかることで粘膜を傷つけ、排尿困難、頻尿、残尿感などの他、血尿を起こし、尿が濁ることがあります。激しい痛みに吐き気・嘔吐など辛い症状が起こる可能性もあります。
腎盂腎炎
腎臓の中で一時的に尿が溜められる部分を腎盂と言います。ここから尿管を伝って尿は膀胱へと送られます。この腎盂が細菌感染で炎症を起こしてしまうのが腎盂腎炎で、尿に白血球が混ざり白濁します。その他高熱、背中や腰の痛み、吐き気・嘔吐といった激しい全身症状が起こることもあります。なお、腎盂腎炎のほとんどは膀胱炎などの悪化によるものとされています。
急性膀胱炎
急性膀胱炎は、多くの場合、尿道から侵入した細菌が膀胱まで侵入して炎症を起こすことが原因となっています。男性の場合尿道が長く途中でL字型に曲がっているため尿道炎が多く、女性の場合尿道短く直線的なため膀胱炎が多くなります。尿が濁る、血尿が出るなどの他、頻尿や排尿時痛などが主な症状になります。膀胱炎は再発しやすいため、適切な治療を行う必要があります。
尿道炎
淋菌やクラミジアといった性交渉による感染(性感染症)が原因となります。尿道に急性の炎症が起き、排尿時痛や膿が混ざって尿の白濁が見られます。放置していると尿道が狭くなり、排尿が難しくなることもあります。男性に多いのが特徴です。
淋菌感染症
淋菌という細菌に感染した状態で、淋病とも言います。男性に症状が起きやすく、排尿のはじめ(尿の出始め)に強い痛みを生じる他、黄色い膿を伴う尿の白濁が見られます。なお、女性の場合は、外陰部の痒みやおりものが増えるといった軽い症状の他はほとんど自覚症状がありません。放置しておくと不妊の原因や産道感染で赤ちゃんに影響が出たりすることもありますので注意が必要です。
性器クラミジア感染症
クラミジア・トラコマティスという細菌による性感染症です。比較的男性に強い症状の出る傾向があり、尿の出始めにしみるような軽い痛みがあります。また尿道から透明な粘液状の膿が出ることもあり、尿が白濁します。女性の場合はほとんど自覚症状がなく、感染に気づかないままということもあります。放置することで不妊の原因や、母子感染の可能性もありますので注意が必要です。
前立腺炎
前立腺炎には、急性のものと慢性のものがあります。急性のものの多くは尿道からの細菌感染によるもので、尿の出始めの排尿時痛や頻尿、残尿感などがあり、悪化すると化膿して尿の濁りが見られます。また下腹部痛や高熱、倦怠感などが生じることもあります。一方、慢性のものはほとんどが原因不明で、慢性的に下腹部や骨盤周辺に違和感や不快感を伴います。
腎結核
結核菌が血管を介して腎臓に感染すると腎結核を起こします。初期には尿の濁りがあらわれるだけですが、進行すると腎臓に膿が溜まり、尿の濁りが強くなります。また高熱や下腹部痛なども起こります。腎結核では腎臓だけではなく、尿路全体に感染が広まることもあり、その場合、頻尿や排尿時痛などの排尿障害も起こります。
前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん
尿路のがんは一般的に初期症状があまりあらわれません。しかし、顕微鏡的血尿が出て尿が濁るなどのケースがあります。尿路のがんは前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん(腎細胞がん)、腎盂・尿管がんなどがありますが、どれも早期発見が大切です。尿検査でなんらかの異常が指摘された場合、できるだけ早めにご相談ください。
なお前立腺がんは、血液検査でPSAという腫瘍マーカーを調べることで早期発見できることがあります。40歳を過ぎたら定期的に検査を受けることをお勧めします。
尿の濁りを起こさないために
尿の色と濁りで少しでもいつもと違うような状況が続いたら、泌尿器科の当院までご相談ください。尿道炎や膀胱炎の症状は性感染症のサインであることもあります。ご自身に自覚症状が無くてもパートナーに症状がでたら、必ずご自身も受診してください。
食生活の注意
結石の原因物質は、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸カルシウムなどでほとんどを占めています。このうち、シュウ酸カルシウムは動物性たんぱく質や、ホウレンソウ、タケノコ、ゴボウ、バナナ、ココアといった食品に多く含まれている傾向があります。アクの強い野菜は茹でてあく抜きをして食べるなどでシュウ酸を減らすことが有効です。また黄緑色野菜や柑橘類などを多く摂ってバランスの良い食生活を保つことで、シュウ酸カルシウムの結晶化を防ぐ効果があります。一方、尿酸カルシウムはプリン体の老廃物として尿酸をつくるため、アルコール飲料、レバー、牛肉や魚の肝類などプリン体の多い食品を制限することで、尿路結石の可能性を減らすだけではなく、痛風予防の効果も期待できます。
性交渉時にはコンドームを使用しましょう
性感染症は、多くの場合粘膜同士の接触による感染が多く、予防のためにはコンドームの使用が有効です。しかしコンドームの使用だけでは完全ではありませんので、パートナーとともに予防意識をもっておくことが大切です。