尿の勢いが気になる
この頃どうもおしっこの勢いが弱くなってきたという現象は、排尿障害としてよくあるもので、専門的には尿勢低下と言います。膀胱から外尿道口までの長さが女性の4~5倍と長く、途中に前立腺があり、尿道事態もL字型に曲がっているため、男性の多くみられる傾向にあります。
原因として一番多いのは、加齢に伴う前立腺の肥大です。また前立腺がんや膀胱がんも進行してくると排尿困難を起こすため尿勢低下が起こります。
前立腺肥大症を放置しておくと、尿が出なくなる尿閉などに進行することがあります。多くの場合、内服治療によって症状の改善が期待できますので、症状に気づいたらお早めに当院までご相談ください。
膀胱に問題がある場合
頻尿や尿意切迫感などを伴うことがあります。また排尿痛や血尿といった症状があらわれることもあります。
尿道に問題がある場合
尿道に炎症が起きた場合、下腹部痛や会陰部(えいんぶ)痛(性器と肛門の間の痛み)、発熱、外尿道口から粘液や膿が出るなどの症状が見られることもあります。
疑いのある疾患
前立腺肥大症
前立腺は膀胱の下に尿道を取り囲むように存在する男性特有の臓器です。加齢に伴い肥大してくる傾向があります。肥大が進むと膀胱や尿道を圧迫して、様々な症状を起こします。主な症状としては尿が出にくい、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感などで、放置することで尿が出なくなる尿閉を起こすこともあります。70歳以上の7割以上が前立腺肥大症とされています。薬物療法および手術にて治療していきます。
前立腺がん
日本でも男性のがんとして増えてきているのが前立腺がんです。増加してきた要因としては、食生活の欧米化により高たんぱく、高脂質の食事が増えてきたこと、高齢化社会を迎え、相対的に高齢男性が増えてきたことなどが考えられます。前立腺がんは前立腺の外側にできやすく、早期には自覚症状があらわれませんが、進行することで、尿勢低下の他、排尿痛、夜間頻尿などの症状があらわれます。前立腺がんは進行すると転移しやすいため、血液検査で腫瘍マーカーのPSA値を定期的に調べることが早期発見に役立ちます。
急性前立腺炎・慢性前立腺炎
急性前立腺炎は、ほとんどの場合細菌が尿道から前立腺まで届き感染したものですが、血管を経て感染することもあります。症状としては、排尿困難、尿勢低下、排尿時痛、頻尿などがあらわれます。
慢性前立腺炎は、急性前立腺炎が慢性化したものの場合もありますが、長時間の座位など、機械的刺激や原因のわからない特発的なものもあります。症状としては排尿困難や排尿時痛、頻尿、下腹部や陰部の違和感や不快感などが挙げられます。
神経因性膀胱
排尿は脳と膀胱を繋ぐ神経系統によってコントロールされています。この神経系統のどこかに異常が起こると、膀胱が正常に機能しなくなり神経因性膀胱となります。排尿困難や尿勢低下の他に、頻尿や切迫性尿失禁などあらわれます。脳血管障害やパーキンソン病、糖尿病神経症などの疾患や外傷、脊柱管狭窄症などが原因となって起こることがあります。適切な治療をしないと腎機能障害を起こすこともありますので注意が必要です。当院では、神経因性膀胱の診断に膀胱内圧測定器を用いた診断を行っておりより正確に膀胱の力を測定します。
尿道狭窄(にょうどうきょうさく)
尿道炎などで炎症が強かった場合の後遺症、尿道カテーテルの留置などの他、外傷などが原因となり尿道が狭くなっている状態です。排尿困難や尿勢低下があらわれます。また頻尿や尿失禁などを起こしてしまうこともあります。自力で排尿できない尿閉が起こることがある他、放置していると尿路感染症や腎機能障害などから重篤な事態になることもあります。一時的な尿道狭窄の解除には外来での治療である尿道ブジ―を用いた尿道拡張法を行いますが根治的ではありません。尿道拡張術や内視鏡的尿道切開など外科的な方法によって治療を行います。
近年では、尿道カテーテル拡張と薬液の浸透による尿道狭窄の解除を行うoptilumeと言われる尿道狭窄解除を目的としたカテーテル治療の開発も進んでいます。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、細菌感染などがなく、膀胱に炎症が起こる疾患で、感染性の急性膀胱炎とはまったく異なります。原因はまだよく分かっていませんが膀胱内の粘膜機能の障害や免疫の異常などが関係していると考えられています。
症状は、膀胱に尿が溜まってきたときの下腹部痛で、排尿によって痛みが緩和することが特徴です。また頻尿などの症状もあらわれます。酸性の強い柑橘類やカフェインの強い飲み物などで悪化することが知られています。
過活動膀胱
尿が十分に溜まりきっていないうちに膀胱が急に収縮してしまい、突然激しい尿意が起こります(尿意切迫感)。強い尿意によって我慢できず、何度もトイレに通うことになります(頻尿)。そのため1度の尿量は減り尿の勢い(尿勢)も低下します。また、過活動膀胱の半数は尿失禁を伴うものがふくまれており、尿失禁を伴うものをOAB(over active bladder)wetと呼んでいます。近年の研究では、過活動膀胱が夜間の転倒や骨折に関連していることも分かっています。
脳血管障害やパーキンソン病といった脳・神経の疾患や、前立腺肥大症などの疾患が原因の場合もありますが、加齢や原因不明なものも多く、日本排尿機能学会の調査では、日本では800万人以上の罹患者がいるとされています。認知症のかたにも起こることが分かっています。認知によるトイレが分からないから失敗してしまってると考えられていた方に中にも過活動膀胱による尿失禁の可能性があります。
尿道腫瘍
膀胱から排尿されるまでの尿の通り道が尿道です。長さは人によって異なりますが、平均的に男性では20cm程度、女性では4cm程度と圧倒的に男性の方が長いことが特徴です。
そのため男性は尿道炎を起こしやすいのですが、膀胱がんの既往症や性感染症を繰り返すことによって稀なケースながら尿道にがんができることもあります。尿道にがん(腫瘍)が生じても、初期には、ほとんど自覚症状が無いことが多く、進行してくると排尿困難や血尿、尿道から膿が出る、夜間頻尿といった症状の他、足の付け根や陰茎・会陰部などでしこりに触れることがあります。
尿道結石
結石が膀胱と尿道の間にできる状態で、尿道の長い男性に多く見られます。症状としては、下腹部の強い痛みや頻尿、残尿感、排尿困難、尿勢低下、尿が二股になるなどの他、肉眼的な血尿があらわれます。
前立腺疾患なら日帰り手術(治療)を
当院では、前立腺疾患に対して下記のような治療を行っています。
Rezūm™
Rezūm™は、前立腺に対する水蒸気圧治療です。治療時間は約5分。手術後は数日カテーテルの留置を行いますが、自宅で管理可能です。前立腺が約2か月~3か月の時間を経て縮小し、排尿状態が改善します。また、内服薬をやめていくことが可能な日帰り手術です。
Urolift
Uroliftは、前立腺の狭窄部位を即時に開くインフラント手術です。術後は数日排尿の違和感がありますが、痛み止めの内服で軽減します。手術時間は約10分。術後はカテーテルの留置をしなくて済むことが多い手術です。
元々尿閉(尿が出なくなったかた)や術中の出血が見られた方は数日カテーテルを留置します。日帰りで手術が可能であり即時に排尿状態が改善します。