前立腺がん
前立腺がんは早期発見で根治を目指せるがんです。ほとんどの前立腺がんは、その早期にはほとんど自覚症状はあらわれませんが、進行してくると尿が出にくくなる排尿障害、排尿時痛、血尿といった症状が起こります。また、進行してくると骨への転移も非常に起こりやすくなります。前立腺がんの診断にはPSA採血や直腸診、超音波やMRIを行います。スクリーニング検査としてPSA採血をお受けいただくことが一般的です。
現在では、ロボット支援下の手術や放射線、陽子線、重粒子線などの対外照射や小線源療法などの体内照射、HIFUなど多岐にわたる治療が可能になっています。病気の状態や生活環境に合わせた治療が可能です。
渋谷区では、40歳以上の男性を対象に前立腺がん検診を行っています。ただし、渋谷区の無料がん検診と同時受診の場合のみの実施となり、自己負担1,000円(税込)となります。
診断に有用な検査
腫瘍マーカー(PSA)
PSAは前立腺で分泌される特有のたんぱく質で、通常は前立腺細胞内に含まれるために、血液中にはほとんど溶け込みません。しかし、前立腺がんがあるとがんの特性上自立的に不整形の細胞増殖がおこり希弱性の高い細胞が破壊されPSAが血中に多く含まれるようになります。血液検査でPSA値を測ることが前立腺がんのマーカーとして有効な手段です。血中PSAの正常値は4.0ng/mLという指針がありますが、気をつけなければならない数値は年代によって異なり、比較的若い40代の方では2.5ng/mL程度であっても精密検査を行うことが奨励されています。PSA2.5-4ng/mlの正常値とされる値の中にも3割程度前立腺がんがあることも報告されています。また、稀にPSA値が上がらない前立腺がんもありますので、疑わしい場合は直腸診も受けておくことをお勧めします。
直腸診
医師が肛門から指を挿入して直腸内を数cm進んだところにある前立腺に触れて状態を確認します。この時、しこりに触れるようなら前立腺がんの疑いがあります。
画像診断
直腸診などで診断が難しい場合には、経直腸的超音波検査やMRI検査などの画像診断を行います。また、前立腺がんと診断された後、治療法の選択のために行うこともあります。
前立腺がんを疑われたら
前立腺に針を刺して組織を採取する「前立腺生検」を行います。経直腸的な方法と経会陰的な方法がありますが、当院では経会陰的な方法で検査を行っています。この方法は麻酔が必要ですが、感染症などの合併症のリスクが低く安全な検査方法になります。また、通常は1~2日の入院検査ですが、当院では日帰り検査で行っております。
膀胱がん
膀胱がんの早期の代表的な症状は、痛みも何もないのに突然で血尿が出ることです。しかし進行してくると、排尿時痛や残尿感、下腹部の違和感などがあらわれることもあります。血尿以外は膀胱炎とよく似た症状で、血尿も肉眼的血尿のケースが多いですが、顕微鏡的血尿しか出ない場合もあります。膀胱がんは早期のうちであれば、膀胱鏡下の低侵襲な手術で完結できますが、進行すると膀胱全摘出などになります。痛みなどの症状のない血尿や強い頻尿が頻回に起こるような場合にはすぐに泌尿器科を受診するようにしましょう。
診断に有用な検査
膀胱鏡
尿道からスコープを入れて膀胱内部を観察する検査で、男性の場合は尿道に麻酔のゼリーを注入し10分ほど待ってから検査を行います。女性の場合は膀胱鏡挿入時に麻酔のゼリーを塗布します。若干苦痛はありますが膀胱がんを確認するために有用な検査です。当院では軟性膀胱鏡を使用し痛みを軽減した検査を提供しています。
超音波検査
尿を溜めた形で、腹部超音波検査で膀胱の状態を確認します。がんのできた位置や大きさなどによって見つけにくいケースもあり、膀胱鏡による検査より正確度が下がります。
尿細胞診
尿中にがん細胞が含まれないかを確認します。ただし、膀胱がんだけで陽性になるわけではなく、腎盂尿管がんなどでも尿中にがん細胞が混ざることもあります。また悪性度が低いがんの場合は陰性のままのこともあります。そのため膀胱鏡や超音波検査などと合わせて行う検査になります。
膀胱がんを疑われたら
麻酔をした上で、内視鏡下でがんの切除を行います。早期のがんの場合、この治療だけで治療が完了することもあります。進行している場合は膀胱の全摘出、転移がある場合には化学的療法や免疫療法、放射線療法などを行います。近年では、膀胱全摘に関してもロボット補助下に手術が可能になってきており、尿路変更に関しても回腸導管(腸を体外へ出してストマ(袋)を装着する)や回腸新膀胱(腸を使って代用膀胱の作成をして自排尿を出来るようにする)などの方法もロボット手術で試みられています。
腎がん
腎がんも早期のうちはほとんど自覚症状がありません。しかし進行してくると、血尿、発熱、痛みといった症状があらわれてきます。現在では人間ドックや他の疾患の疑いで超音波検査を行い、偶然発見されて腎がんと診断されるケースが多くなっています。腎がんは稀に下大静脈(腹部の中心を走るからだで一番太い静脈)へ伸展し心臓に達することもある下大静脈腫瘍塞栓を起こすこともあります。無症状で進行することもありますが、息切れや動悸、体のだるさなどで発見されることもあります。
診断に有用な検査
超音波検査
検診で偶然発見されることが多いなど、腎がんの発見には超音波検査が有効ですが、診断のために再度超音波検査を行うこともあります。超音波検査だけでは診断がつかない場合、CT検査やMRI検査などを行います。
腫瘍マーカー
腎がんに特徴的な腫瘍マーカーはありません。血液検査では、白血球や赤血球などの状態やクレアチニンなど腎機能に関する数値を確認する他、一般的な腫瘍マーカーであるCRPやIAPなどの値を総合的に見ます。
腎がんを疑われたら
通常腎がんでは生検を行うことで浸潤や転移が起こる可能性を考慮して、生検は行いませんが、ごく早期ではがんかどうか不明な場合やすでに転移が見られる場合には生検を行うこともあります。
治療は、年齢などによっては経過観察のみのこともありますが、基本的には手術でがんのある方の腎臓を部分摘出するか全摘出することになります。最近では、ロボット補助下の手術にて傷が少なく低侵襲に手術が可能になっています。転移のある場合は化学療法や放射線療法などを行います。当院では、腎がん手術を多く経験した医師により適切な病院への紹介を致します。また、順天堂大学に在籍をしていることもあり大学での検査や治療をお受けいただく準備も可能です。
腎盂尿管がん
腎盂は作られた尿を一時蓄積して尿管に送り出す役割を果たし、尿管は平滑筋を脈動させながら尿を膀胱へと運ぶ役割を果たしており、腎盂、尿管、膀胱は同じ尿路上皮という組織でできています。そのため、腎盂や尿管も膀胱と同じ仕組みのがんが発生することがあります。これが腎盂尿管がんで、血尿を主な症状とします。また、腎盂と尿管は左右に1つずつ対でありますが、このうちがんができた方の背中や脇の痛みが出ることもあります。
診断に有用な検査
超音波検査
無侵襲の検査で、腎盂がんそのものを発見することもありますが、尿管にできたがんによって尿路障害が起こり腎盂に尿が必要以上に溜まってしまう水腎症を起こしている様子が発見されることもあります。ただし、水腎症は尿管結石などでも起こりますので、診断が難しい場合は造影剤を使ったX線検査や尿管経由で行う内視鏡検査、尿検査による尿細微診などを組み合わせて診断していきます。
X線検査(逆行性腎盂尿管造影)
造影剤を注射して腹部X線検査を行う方法や、尿道から腎盂までカテーテルで造影剤を注入してX線検査を行う方法などがあります。尿道から行う方法はそのままでは苦痛を伴うため、麻酔をかけて行うことになり、入院が必要です。
尿管鏡検査
尿道から細い内視鏡のスコープを入れて尿管、腎盂までを検査します。これも苦痛を伴うため麻酔をかけて行う必要があります。そのため入院が必要です。
尿細胞診
尿中にがん細胞が出ていないかを検査します。この尿検査では膀胱がんの場合も陽性となりますので、他の検査と共に行い、さらに高度な検査に進む必要があるかどうかを判断するために行います。
腎盂尿管がんを疑われたら
基本的には手術によって、がんのある方の腎臓や尿管を全摘出します。転移のある場合は化学療法や放射線療法を行うこともあります。またすでに片側の腎臓を摘出している場合なども保存的療法を検討することがあります。
精巣がん(精巣腫瘍)
精巣がんは、10万人に1人程度と希少がんの一つです。しかし、20~30歳代と若年層の男性に発症するがんとしてはトップに位置するため急激な進行に注意が必要ながんです。睾丸の左右の大きさが異なってきたり、しこりができてきたりするなど、比較的外形から発見しやすいがんですので、ちょっとした症状に気づいたら、早めにご相談ください。
診断に有用な検査
超音波検査
基本的には経験の豊富な泌尿器科の医師であれば触診だけでも診断できるのが精巣がんですが、その大きさや進行具合などを正確に判断するために超音波検査も行います。
腫瘍マーカー
精巣がんの腫瘍マーカーとしては、LDH、AFP、HCGの3つが知られています。これらはがんの型や病状を反映するため診断のためばかりではなく、治療効果の確認のために利用します。
精巣がんを疑われたら
まずは、がんの存在する側の精巣を摘出する手術を行います。しかし、進行もはやく転移を起こすことが多いがんであるため、放射線療法や化学療法を摘出後に行うことも多くなっています。