夜間多尿外来
(夜間3回排尿は寿命が短くなる?)

夜だけ頻尿?
眠れない原因は?

夜だけ頻尿?眠れない原因は?冬の夜、やっと暖まったのに、少し眠ったと思ったら尿意で目が覚めてしまう。夏の夜、暑さでなかなか寝付くことができなかったのに少し眠ったら尿意で目が覚めてしまう。そんな状態が続くとだんだん睡眠の質が悪くなってしまいます。すると、疲れが取れなくなることや、昼間に眠気が襲ったり、だるくてやる気が出なくなり、日常生活にも差し障りが生じます。高齢の方は暗い中を慌てて移動するために転倒・骨折の危険性も高まります。歳だから仕方ないと、つい面倒になって受診を怠りがちな夜間頻尿ですが、適切な治療を行うことで改善できる病気です。夜間の頻尿の多くの原因は夜間多尿が原因です。ホルモンバランスの変調やサーカディアンリズム(ホルモンの日内変動)を整えることでよくなります。夜間回数を放置すると体が虚弱になり、筋肉量が落ち、免疫能力が低下することも分かってきています。年のせいだと放置せず必ずご相談ください。

夜間頻尿とは

夜間頻尿の症状を訴える人は、加齢とともに増加します。尿路障害などについての研究団体である国際禁制学会は「夜間排尿のために1回以上起きなければならないという訴え」を夜間頻尿と定義しています。

夜トイレに1回
起きるのは異常?

たった1度でも尿意で目が覚めて連続的な睡眠が途切れると、睡眠のリズムに乱れが生じ、それが連続すると睡眠障害が起こる可能性もあります。特に夜間2回以上トイレで起きてしまう場合、睡眠の質が著しく低下するため、治療が必要な段階とされています。夜間3回以上の排尿は、寿命の短縮に関係することも報告されています。
夜間頻尿には様々な原因がありますが、夜間頻尿の裏には何らかの身体機能の低下や障害が隠れている可能性もあります。いつでもご相談ください。

夜間頻尿の原因

多尿・夜間多尿

多尿(1日の尿が多い)

1日の尿量が総じて多いことを多尿と言います。多尿も夜間頻尿の原因となります。多尿は1日の尿量が体重1kgあたり40mLを超える場合と定義されています。これは体重60kgの人が1日2.4L以上の尿が出る場合に相当します。多尿の原因としては、一日の必要量以上の水分を摂る多飲、糖尿病、ホルモン異常や腎疾患など様々なものが考えられます。

夜間多尿(夜間の尿が多い)

人は就寝中にあまり尿を作らないよう、抗利尿ホルモン(バソプレッシン)を分泌します。加齢や疾患などが原因で、この抗利尿ホルモンの分泌が低下すると就寝中にも昼間と同様尿が作られてしまい、夜間頻尿の原因となります。夜間排尿インデックス:夜間尿量÷1日の尿量=33%以上(65歳以上)の場合夜間多尿と診断します。(60歳以下は20%以上)

膀胱蓄尿障害
(あまり溜められない)

過活動膀胱間質性膀胱炎前立腺肥大症といった排尿障害を起こす疾患があると、膀胱に尿を溜めることができなくなることがあります。そのため、夜間就寝中も頻尿症状があらわれることになります。

睡眠障害
(眠れないからトイレに行く)

就寝中に尿意で起きてしまい、睡眠が妨げられ、それが続くことで睡眠障害を起こしてしまうことがあります。また反対に睡眠障害でなかなか寝付けないために、やっと眠れた時には膀胱に尿が溜まってしまってすぐに起きてしまうということもあります。夜間頻尿と睡眠障害はこのようにお互いに関連し悪循環を起こします。

夜間頻尿の原因は
睡眠時無呼吸症候群?

就寝中に尿意で起きてしまうことと、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係も近年指摘されています。睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まってしまう状態が10秒以上続く無呼吸症状が1時間に5回以上、または睡眠時間7時間として30回以上あらわれるものと定義されています。
本人は気づきにくいのですが、睡眠の質が低下するだけではなく、無呼吸状態が続くことで血中の酸素が不足し、血圧の上昇、脈拍の上昇などがあらわれ、突然死のリスクも高い危険な症状です。夜間頻尿との関係は、本来眠っている間は副交感神経やホルモンの働きで蓄尿能力は高まり、尿の産生は減るのですが、血圧上昇や脈拍上昇によって自律神経が乱れ、交感神経が働いて膀胱が収縮してしまうためではないかと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、生活の質だけではなく、身体に大きな負担となります。

男女で異なる
夜間頻尿の原因

男性特有の原因(前立腺肥大)

夜間頻尿には、男女それぞれの固有の事情が原因となっていることもあります。男性の固有の原因としては、前立腺肥大症があります。前立腺は、加齢とともにだんだん大きくなってくるのですが、一定以上大きくなると、尿が出にくくなり残尿が増えるようになります。そのため膀胱も敏感になり、尿意を感じる回数が増えます。似たような症状では前立腺がんの場合もありますので、前立腺肥大の症状を感じたら、受診してください。

前立腺肥大症

女性特有の原因(過活動膀胱)

女性は尿道が短く直線的な構造上の特徴や、出産などによって尿路に問題が起こりやすくなっています。たとえば、突然激しい尿意を催し、時に我慢できずに失禁してしまうことがある過活動膀胱が女性に多いのもこうした女性の身体の特徴に関係していると考えられます。また、女性は外尿道口から細菌の侵入があると膀胱まで到達しやすく、膀胱炎を起こしやすいことが知られています。さらに長時間トイレを我慢することも多く、その場合は慢性膀胱炎を起こして、膀胱の違和感から頻尿となることもあります。
その他、出産、加齢などがきっかけとなり、骨盤底筋群が障害されたり緩んだりすることで、骨盤臓器である子宮、膀胱、直腸などが下がってしまい、膣内に飛び出したり、さらに膣から飛び出したりすることもある骨盤臓器脱を起こすと、下がってきた臓器が膀胱を圧迫したり、膀胱そのものが下がったりすることで夜間頻尿になることもあります。

過活動膀胱

夜間頻尿の治し方

夜間頻尿は、寝ている間の尿の量が増える、寝ている間に溜めることができる尿量が減っているという2つのタイプに分類できます。
このどちらのタイプかを判断するため、ご来院前にしばらくの間「排尿日誌」をつけてご自身の排尿の状態を記録していただくようお願いしています。
排尿日誌は、トイレにいった時刻と排尿量と飲水の時刻と種類と量を記録します。排尿量は、少し大きめのプラスチックの計量カップを使うと良いでしょう。飲み物を飲んだ際も、飲料の種類と量を記録しておきます。また、尿意切迫感や少量でも尿失禁があった時は、その時刻も記録しておくようにしましょう。
当院では、詳細に排尿日誌を分析し、夜間多尿の原因や生活習慣、排尿習慣を分析致します。
排尿日誌は院内でもお配り致します。また一般のインターネットで書式をダウンロードすることもできますので、活用して見てください。検尿コップは、牛乳の箱を切ってメモリを付けて作成してもよいですし、100円ショップ等で購入も可能です。

夜間頻尿自分で治せる?

頻尿の状態を改善するために、生活習慣の見直しや自身でサーカディアンリズムを整える、飲水習慣や入浴の習慣を見直す、膀胱訓練や骨盤底筋体操といったセルフメディケーションがご自宅でできる方法があります。これらを行うことである程度ご自身で症状を改善することも可能です。

飲水習慣

日本人は、脳梗塞の予防や健康のためにと眠前に飲水をしている方が非常に多い傾向にあります。脱水症がある方が、飲水をすると脳梗塞の予防になることは確かなデータがあります。しかしながら、脱水にもなっていない方が、眠前、夜間の飲水をすることで梗塞を予防できるでしょうか。
夜間飲水と日中飲水の比較では、脳梗塞の発症率に差がないとのデータが出ています。また、夜間飲水を多くとっても血液粘ちょう度(血液のドロドロ具合)は改善しないデータが出ています。
サーカディアンリズムの変調の起こる高齢者に対し夜間飲水は、夜間多尿を増強してしまいます。
夜間1L以上排尿していることもあり、眠前は飲水を控えることが重要です。脳梗塞や心筋梗塞の予防のために日中トイレがある場所ではしっかりと1.5L近く飲水をお行い、眠前2時間前からはうがい、夜間も起きるたびの飲水は控えうがいをすることをお勧めします。

入浴の習慣

仕事が終わったら早めに入浴し、一風呂浴びたら晩酌をするのが1日の楽しみであったり、醍醐味でもあるかもしれません。スポーツクラブで汗を流したらシャワーを浴びて終わりにしているかもしれません。しかしながら、夜間回数増加でお困りならば、少し生活習慣を見直すチャンスかもしれません。寝る直前(30分くらい前)に入浴をすると睡眠ホルモンであるメラトニンが活性化します。体温が高い状態で布団に入り、徐々に体温が下がってくるときにメラトニンの分泌が誘導され深い眠りが出来るようになります。一度騙されたと思って思い切って眠前に入浴をし、夜間2時間前からうがいにしてみてください。きっと夜間の回数が1回~2回減少します。

飲酒の習慣

飲酒と夜間多尿は密接に関係をしています。晩酌が悪い訳ではありません。お酒を飲むこと自体が悪いとも言いません。しかし、飲酒と排尿の関係を知って欲しいのです。飲酒をすると約4時間後に大量に尿が作られます。例えば、夜8時まで晩酌をし、夜10時に就寝する習慣があると、夜間12時~1時くらいから、大量に尿が作られます。夜中何回もおしっこに行く羽目になるのです。飲酒をする場合は、寝る時間の4時間前までに飲み終わるか寝る時間を少し遅くする工夫が必要です。
アルコールの種類は特に関係ありませんが、ビールとノンアルコールビールを併用して飲むと強い利尿効果が出ることが分かっています。

膀胱訓練

膀胱訓練は、尿意を感じたときにトイレに行くのを1度我慢してみることから始めます。最初は尿意を感じてから5分程度我慢し、1週間続けます。次は10分、15分と我慢する時間を延ばしていき、排尿間隔が2~3時間になったら成功です。これは過活動膀胱などにも有効です。

骨盤底筋体操

骨盤底筋群を緊張させるには、便を我慢する時のように尿道から肛門にかけてぐっと力を入れてゆっくりと締め付けるようにします。女性はこの時膣も一緒に締めるようにしてください。2~3回繰り返すことを続けると骨盤底筋の筋力が増強し、下がっていた膀胱や直腸、子宮などが上昇し、膀胱への違和感が減っていきます。
馴れるまでは仰向けに寝た状態でM字に膝を立てると力を入れやすくなります。馴れてくると立っている時や歩いている時に自然に締めることができるようになります。
当院では、新しい持続可能な骨盤底筋群体操として、PNF療法と合わせた骨盤底筋群体操も提案しています。また、積極的に骨盤底を鍛えたい方は、高周波磁気治療(スターフォーマー)での治療をお勧めしています。

骨盤底筋体操

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