男性の泌尿器科について
泌尿器とは、尿の流れをつかさどる(腎臓・尿管・膀胱・前立腺・尿道)と副腎などのホルモンをつかさどる臓器、不妊症に関わる精巣や勃起障害(ED)など、多岐にわたる部分を見ています。むかしは、外科の一つの部門でしたが、診療範囲が多いために今では独立した泌尿器科として診療を行っています。
男性泌尿器科は、男性の健康を守る診療科としても進化しており、排尿障害や男性更年期障害、EDなどの生活の質(QOL)に関係する診療も多く行われています。
様々な症状や不調などは年齢にかかわらず、誰でも相談しにくい部分があると思います。当院では、プライバシーに十分配慮した上で、経験豊富な医師が相談しやすい環境を用意しております。
男性の泌尿器科で
よくある症状
次のような症状があらわれている場合には、いつでも当院へご相談ください。
- 頻尿(何度もトイレにいきたくなる)
- 夜間頻尿(夜間1回以上トイレで目が覚める)
- 突然我慢できない強い尿意に襲われる
- 軽い尿漏れやトイレに間に合わず漏れてしまう
- 尿の勢いが弱くなってきた
- 尿がでづらいと感じる
- 尿が出終わったはずなのに、まだ残っている感覚(残尿感)がある
- 排尿が終わるまでに時間がかかる
- 排尿時や出終わった時に痛みを感じる
- 血尿が出た
- 尿道口から膿が出た
- 血液検査でPSA(前立腺がんのマーカー)の価を指摘された
- 性欲がわかない、勃起しない
- 睾丸(精巣)が小さくなった気がする
- 睾丸(精巣)や陰嚢が大きくなった気がする
- 睾丸(精巣)や陰嚢が痛む
- 定期検診で尿たんぱくや尿潜血を指摘された
- やる気や集中力が無くなった
- 体がだるくてなにをやるのもおっくう
- 夜間の排尿回数が多くて眠れない(眠りが浅い)
など
男性の泌尿器科で
対象となる疾患
前立腺肥大症
前立腺は男性のみに存在する臓器です。
膀胱の真下に位置し尿道を取り囲むように存在するクルミ大の臓器です。役割は前立腺液を作り、精子の成熟や運動に関係をし、射精を補助する役割をしています。日本人では、昭和初期までは前立腺は縮小傾向でしたが、食事の欧米化や加齢の変化によるホルモンのバランスの乱れことなどが原因で前立腺が肥大傾向にあります。前立腺の肥大は40歳台から始まり、50歳台で4割、60歳台では5割、70歳では7割の方が前立腺肥大があると言われています。(図1)症状としては、尿が出にくくなる排出障害や残尿感があるなど蓄尿障害が起こってきます。最近では、こうした排尿症状の悪化だけではなく、前立腺肥大症と男性力(男性ホルモン:テストステロン)との関係や、鬱やEDとも関連があると言われています。さらには、前立腺肥大症をほうっておくと、膀胱にダメージが蓄積し、膀胱の収縮する力が弱くなり残尿が増えたり、尿が溜めにくくなり、尿意を敏感に感じやすくなるなど、膀胱の健康にも影響を与えることが分かってきています。中高年の男性で、尿が出にくいといった症状があらわれた場合、前立腺肥大の可能性があります。早めに当院までご相談ください。
前立腺炎
前立腺が炎症を起こしてしまうのが前立腺炎で、急性前立腺炎、慢性前立腺炎に大きく分類されます。
急性前立腺炎は、尿道口から侵入した細菌による感染が主な原因で、常在菌の侵入の他、性感染症などが要因となることもあります。症状は排尿時痛、排尿困難、頻尿などの他、発熱をともなうこともあります。
慢性前立腺炎は、働き盛りや若い方にも起こります。感染性の急性前立腺炎を治療しなかったために慢性化したケースや、感染によらず、生活習慣や運動不足など何らかの原因で前立腺が血行不良となったり、ストレスが要因となったりすることで発症します。慢性前立腺炎になると、急性時のような排尿時の強い症状はあまり見られませんが、下腹部の不快感、下腹部や会陰部などの違和感や差し込むような痛みなど、はっきりしない症状があらわれては消えるといったことを繰り返すようなことがあります。
このような症状が続く場合は慢性前立腺炎の可能性があります。当院では、お悩みの方に、今までの内服治療や行動療法に加え、今までにない磁気治療(スターフォーマー:自費)ので、治療を提案致します。ご相談ください。
前立腺がん
前立腺がんは男性特有のがんで、初期にはほとんど症状がありません。ある程度進行してくると、前立腺肥大と同様、排尿時痛、排尿困難などの症状の他、血尿が出ることもあります。比較的進行はゆっくりしていますが、進行すると近くのリンパ節・骨やその他の臓器に転移することもあります。発症は50歳以降の中高年に多くなっています。
2019年の国立がん研究センターによる統計では、男性のがん罹患率の中では第一位を占めており、年次推移でも増加の傾向を示しています。がん細胞は自立的に増殖し細胞を破壊します。このため、前立腺細胞に含まれるPSAたんぱく質が血中に漏れ出す量を測定する血中PSA検査により早期発見が可能です。
前立腺がんは遺伝が関連していることも知られています。血縁者に前立腺がんとなった方が居る場合は注意するようにしましょう。また、50歳以上では定期的に血液検査でPSAの数値を確認しておくことをお勧め致します。
尿路結石
尿路のどこかに尿中に含まれるミネラル成分が結晶化して石のようになってできるのが尿路結石です。シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸など多岐にわたる成分があります。結石ができる場所の多くは腎臓です。腎臓結石の場合には、あまり症状があらわれることはありませんが、腎臓内で結石が結合しサンゴ状になることもあり、腎機能に影響することもあり注意が必要です。結石を作りやすい食生活やホルモン値の異常が無いかを調べていく必要があります。結石が、尿管に落ちてくると、結石が尿の流れを阻害し尿管に尿が滞留します。尿管の内圧が高まることで腎臓が腫れ、尿管が痙攣をすることで痛みが出現します。痛みを感じる受容体が腎臓周囲(腎被膜)にあり、尿の滞留で内圧が高まり腎臓の被膜が急激に引き延ばされることにが、背中や腰、脇腹などに激しい痛みを生じる原因です。また、尿管の痙攣などにより関連痛と言われる、尿路と関係のないみぞおちの痛みが出たり、結石の位置により背部痛から下腹部痛に痛みが移動したりします。結石が尿管の下端、膀胱の近くまで落ちると頻尿などの排尿症状も加わります。結石が尿管を傷つけて血尿が出ることもあります。また、前立腺肥大症の長期化などにより膀胱に結石が出来たることもあります。尿とともに尿道に至った場合は、頻尿・排尿困難や排尿時痛などを起こすこともあります。
尿路結石は、女性より男性に多い傾向があり、最近では、若年者にも多い傾向にあります。食事内容や食事のとる時間や習慣、飲水量などとも関係があると言われています。食事との関連が強いシュウ酸カルシウム結石では、シュウ酸を含む食事内容の見直しも必要となります。特に、ブラックのコーヒー、濃い紅茶、玉露などの濃い緑茶、チョコレート、ココア、灰汁(あく)のでる野菜(ほうれん草・里芋・タケノコなど)、肉類の脂身や味付けの濃い欧米食などには注意が必要です。
結石は、留まっている位置や大きさなどによって治療方法が大きく異なります。そのため、画像検査などで位置や大きさを把握し、治療方針を決定していきます。
尿路感染症
尿路感染症は、尿道口から侵入した細菌やウイルスが尿道、膀胱などに感染して様々な症状を起こします。
一般的に男性は尿道が25㎝程度と長くL字型に曲がっており途中に前立腺や精丘(精巣からつながる出口)があります。女性は尿道が4㎝程度と短く比較的直線的な構造になっているため、尿道口から感染すると男性では尿道炎、前立腺炎や精巣上体炎、女性では膀胱炎、または膀胱炎と尿道炎を併発する傾向が多くなっています。尿道炎の場合、排尿痛などの症状、また膀胱炎では下腹部痛、頻尿、血尿などが主な症状となりますが、膀胱炎だけの場合あまりはっきりした症状があらわれず、気づかずに悪化させてしまうようなこともあります。
放置して、感染が奥(腎臓)まで進んだ場合腎盂腎炎などを起こす可能性もあり、血液中に菌が入ると菌血症、さらには敗血症などの全身症状を合併する場合もありますので注意が必要です。
男性の場合は尿道の途中にある前立腺や精巣、精巣上体などで炎症を起こし血液中に菌が入ること(菌血症)を起こすこともあり、その場合、発熱、排尿時痛、精巣腫大、下腹部や会陰部の痛みなどが起こることもあります。
尿路感染症は一般的に女性に多いとされますが、男性でも前立腺肥大や糖尿病がある場合、また糖尿病治療薬の一種など一部の薬を服用している場合には感染しやすくなることがあります。
特に、高齢者で排尿機能の低下や長期間尿道カテーテルが留置されている方(CA-UTI:カテーテル関連尿路感染症)では、尿路感染症を起こしやすく生命予後に関連することもあります。
急性尿道炎
急性尿道炎は、尿道口から侵入した細菌などによって急激に尿道が炎症を起こしている状態です。性交渉によって感染することが多く、排尿痛、尿道口からの膿や粘液などの分泌などが主な症状です。
原因の多くはクラミジア・トラコマティスや淋菌といった性感染症の原因菌によるもので、その他にはマイコプラズマや大腸菌などの常在菌、トリコモナスなどの原虫なども原因となります。
性行為による感染は、性器同士だけではなく、口腔、肛門などでも感染しますので、性行為の際にはコンドームの装着などで感染を予防するようにしましょう。
また、症状があらわれた場合、受診して検査を受け、医師の指示に従って治療することが大切です。また感染が分かった場合には、パートナーにも説明し、検査を受けてもらうようにしましょう。
淋菌による尿道炎 | クラミジアによる尿道炎 | その他の細菌や原虫 などによる尿道炎 |
|
---|---|---|---|
潜伏期間 | 3日~1週間 | 1~3週間 | 1~3週間 |
発症 | 急激に発症 | 比較的ゆるやかに発症 | 比較的ゆるやかに発症 |
症状 | 排尿時痛 | 軽度の排尿時痛 尿道のムズムズするような違和感 |
軽度の排尿時痛 尿道のムズムズするような違和感 |
不顕性感染*1 | ○ | ○ | ○ |
尿道分泌物 | 白〜黄色 ベタベタ |
透明〜白 サラサラ |
透明〜白 サラサラ |
起因菌 | 淋菌 | クラミジア・トラコマティス | トリコモナス*2 マイコプラズマ*2 大腸菌など |
治療 | セフトリアキソン、スペクチノマイシンなどの注射による | アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンなどの内服 | メトロニダゾール、アジスロマイシン、ミノサイクリンなど原因菌次第で使い分ける |
*1不顕性感染とは感染しているのに症状があらわれない状態
*2トリコモナスとマイコプラズマに関しては健康保険適用となりません
精巣上体炎
精巣上体とは、精巣の上部に精巣を取り囲むように存在する器官で、副睾丸と呼ばれることもあります。通常は精巣で作られた精子を集めて精管に送っています。精管は最終的に前立腺の中央に開口(精丘)し尿道へと繋がっています。そのため、尿道口から侵入した細菌が精管を通して精巣上体まで到達して炎症を起こすのが精巣上体炎であり、男性の尿路感染症の一つです。症状としては陰嚢内部が腫れたり痛んだりする他、発熱することもあります。
原因となるのは、大腸菌などの常在菌の他、クラミジア・トラコマティスや淋菌といった性感染症の原因菌の場合もあります。
精巣上体炎が疑われるときは、採尿、採血検査などによって原因の特定、炎症の状態を確認する他、超音波検査を行います。
精巣上体炎は重症化することもあり、精管が閉塞すると男性不妊の原因となりますので注意が必要な疾患です。必要に応じて連携する高度医療施設へ紹介し、入院治療を行うなど、慎重な対応が必要です。
精巣がん
精巣に発生するがんです。発症は10万人に一人程度と稀ながんですが、好発年齢は0~10歳、20~40歳、60歳以上の3峰性です。20~30歳代と若い世代の男性に発症するがんのうち白血病などを除く固形がんとしては多い疾患になります。
精巣がんは早期のうちであれば、治療で完治できますが、早期にはほとんど自覚症状がありません。無自覚のうちに進行し、精巣の大きさが変化したり、しこりができたり、硬さが変わってくる(硬結)などの症状があらわれ、転移の恐れもあります。また、下腹部の違和感、痛みといった自覚症状もあらわれるようになります。
なお、手術による治療の際は、準緊急手術扱いとなり、腫瘍の波及を防ぐために早期に取り除く必要があります。将来的に妊娠させる能力(妊孕性)に配慮したい場合は、精子の冷凍保存や精巣内から精子を直接採取して保存する方法などを検討することがあります。これらの治療は限られた医療施設でのみ可能ですので、連携する医療機関を紹介して治療を続けることになります。
腎盂腎炎
腎実質でつくられた尿は腎臓内の集合場所である腎盂に集まり尿管へ送り出され、膀胱へと至ります。尿道から入った細菌が下部尿路に留まらず、尿管を逆流して腎臓まで至ることや、尿路結石によって尿が詰まり逆流するなどの原因によって、腎盂が炎症を起こしてしまうことがあります。症状としては、尿が濁る、血尿が出るなどの他、高熱を発する、背中の痛みなどがあります。
腎盂腎炎は適切な治療を行わないと、腎実質に感染が波及し、血液内に菌が到達し菌血症から敗血症になり生命に危険が及ぶこともあります。高熱を発し、背中などに痛みがあるのに、風邪のような上気道の症状がない、尿が濁っているなどの症状がある場合は腎盂腎炎の疑いが強いため、放置せず受診してください。特に糖尿病の方や、ステロイド薬を服用している方などは重症化の危険性があります。
腎嚢胞
はっきりした原因は不明ですが、先天的にできる場合と後天的に出現する場合があります。腎臓の中に内部に液体が入った風船状の袋ができてしまうことがあり、これを腎嚢胞と言います。特に症状は無く、別の目的で超音波検査やCT検査をした際に偶然発見されることが多くなっています。ほとんどは良性のもので、症状が無い場合は経過観察で良いのですが、稀に大きくなって痛みがあらわれたり、腎臓の中心部にできて尿路を塞いでしまうことがあります。またのう胞内に感染を起こすことがあります。5%程度に腎のう胞壁からのがんの発生の可能性があります。
また、左右の腎臓ともに嚢胞が多発する場合(多発性のう胞腎)、遺伝的要素に関係があると言われており、のう胞感染や稀に悪性腫瘍を伴うものもありますので積極的な治療介入を行う事もあります。(サムスカ・のう胞穿刺、腎臓摘出など)慎重に加療を検討致します。当院では、一般社団法人多発性のう胞腎協会の正会員として加盟(会員N0.A0145)しており、多発性のう胞腎協会の本部である順天堂大学泌尿器科への専門外来への紹介が可能です。
腎臓がん
腎臓でも尿を作る働きをしている腎実質に発生するがんが腎臓がん(腎細胞がん)です。2対1くらいの頻度で男性に多く、男性では10万人に33~34人の割合で発症するという報告があり、がんの中では比較的少ない方に入ります。なお、腎臓内でも腎盂にできるがんもありますが、これは腎盂がんと言い、腎臓がん(腎細胞がん)とは区別されています。
腎臓がんは初期にほとんど自覚症状が無いことが問題です。進行すると血尿や背中や腰の痛み、腹部にしこりを認めたりすることがあります。
初期のうちはロボット手術や腹腔鏡手術による治療で根治を目指すことが可能ですが、進行すると転移することがあります。稀に、下大静脈(人間の一番大きな心臓へつながる静脈)に腫瘍伸展し腎がんの下大静脈腫瘍塞栓などで、むくみや息切れなどの症状で発覚することもあります。近年では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などといった治療薬の発達により、かなりの治療効果を得られるようになってきました。
当院では、腎臓がんが疑われるような場合、即日超音波検査を行っており、治療が必要な場合は、連携する高度医療施設に紹介して、スムーズに治療を受けることができるようにしております。医院長は大学病院では、腎がん下大静脈腫瘍塞栓摘除を専門にしていたことや現在も順天堂大学に勤務中であることから、がん治療やロボット手術、分子標的薬治療等のハイボリュームセンターである順天堂大学とも連携し治療を行っていきます。
膀胱がん
膀胱がんのほとんどは、膀胱内部を覆っている尿路上皮にできるがんで、進行状態によって層状になっている膀胱壁の上皮に留まっている筋層非浸潤性膀胱がんと、少し深いところにある筋層まで及んでいる筋層浸潤性膀胱がんに分けられます。
症状は、血尿、排尿時痛、頻尿、残尿感などの他、進行すると尿が出にくくなることや、腰や脇腹の痛みなどがあらわれてきます。中でも特徴的なのは、痛みなどこれといった症状が無いのに突然血尿が出ることです。膀胱がんは、男性で10万人に28~29人程度、女性では10万人に9人程度とおよそ3対1で男性に多く、また45歳以上になると罹患者が増え始め、8割は65歳以上の高齢男性となっています。
喫煙習慣が大きく関連していると言われており、非喫煙者と比べて2.5倍発症リスクが高くなるという統計もあります。治療方法としては、診断と治療を兼ねた、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を行い腫瘍の深達度や組織型や悪性度を確認します。
膀胱癌の内視鏡画像、CT画像などあります。
治療は進行状態やリスクの状態によって、比較的リスクが低く筋層浸潤が見られない場合は、予防的な治療として膀胱内に薬物を注入して行う方法を検討し、筋層浸潤が起こっている場合は膀胱全摘出手術、転移が見られる場合は化学療法や免疫療法などを検討することになります。
膀胱全摘出などの場合、その後の生活の質に大きく影響しますので、腸管を使った代用膀胱である回腸新膀胱などのQOLを保つ治療が可能であるかを検討していくことも可能です。肉眼的に血尿があったり、定期検診などで尿に潜血があったりした場合は放置せず、早めにご相談ください。高度医療機関と連携し適切な治療を提供致します。
神経因性膀胱
膀胱は腎臓から送られてきた尿をしばらく溜めておき(蓄尿機能)、一定量が溜まったら尿を出す(排尿機能)働きをしています。健康な身体であれば、適切な量を溜めることができ、また溜まった尿をすべて排出することで膀胱は空になります。
こうした膀胱の機能をコントロールしているのは、脳から脊髄を通って末梢に至る神経系統です。
この神経系統に障害が起こることによって、尿を溜めて排出するという一連の機能のどこかに障害が起こることや、切り替えがうまくいかず、尿を溜められない、溜まっても排出するためのサインが出ない、必要以上頻繁に尿意が起こる、尿が残ってしまう、尿意を我慢できず漏らしてしまうといった障害が起こるのが神経因性膀胱です。
この原因は脳梗塞やアルツハイマー症といった脳そのものの障害、外傷などによる脊髄の障害、糖尿病などによる末梢神経の障害といった、脳から膀胱と周辺の筋肉などへの伝達の経路のどこが原因となって起こっているかによって症状は様々なものがあらわれます。当院では、膀胱内圧測定などの排尿機能検査や膀胱鏡検査などの進んだ検査により膀胱や尿道、周辺器官などに異常が無いか、残尿状態、尿の流れのパターンなどを確認します。
治療は原因となっている神経障害の箇所や症状にあわせて内服や膀胱注入などの薬物療法や骨盤底筋訓練、磁気治療による排尿・膀胱訓練など様々な方法を検討します。
なお、神経因性膀胱は、近年神経因性下部尿路機能障害(NLUTD:Neurogenic Lower Urinary Tract Dysfunction)と呼ばれるようになってきています。
包茎
男性の外性器である陰茎は陰茎体と亀頭部に分かれていますが、包皮と言われる陰茎体の先端にある柔らかい皮膚の部分が亀頭を覆ったままになっている状態を包茎と言います。
包茎は、普段は包皮が亀頭を覆ったままになっていても、手で包皮を付け根側に引っ張った際や、勃起した際に亀頭が姿をあらわすことができる仮性包茎と、常に包皮に覆われて亀頭が露出できない真性包茎にわけることができます。
仮性包茎で勃起時に亀頭が露出する場合の多くは、特に治療の必要はありません。しかし仮性包茎であっても、なかなか亀頭が露出できない場合などは、亀頭包皮炎など感染症のリスクや衛生上のリスクも高く、手術を検討することもあります。
また真性包茎の場合は、亀頭と包皮が癒着を起こすことや、恥垢と呼ばれる垢が溜まることで陰茎がんのリスクが高まることなどから手術による治療が推奨されています。
なお、包皮輪という包皮の折り返しの部分が極端に狭く、勃起時にゴムバンドのように亀頭を締め付けてしまうようなケースは嵌頓包茎と言って緊急手術が必要になることもあります。
性感染症
性感染症は、性行為によって感染する疾患の総称で、クラミジア感染症、淋病、梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIV感染症(AIDS)など、様々な種類があります。
感染は性器同士の接触だけではなく、肛門、口腔、手など様々な経路で起こります。
男性の場合、多くは尿道に症状があらわれ、排尿時痛、尿道から膿や粘液が出る、血尿が出る、残尿感などの排尿症状の他、性器の痒みや小さないぼができるなどの症状が起こることもあります。
性感染症を放置すると、パートナーや不特定多数の相手に感染を広めたあげくに、自身やパートナーの不妊に繋がる、妊娠した場合胎児感染や出生時感染から赤ちゃんに異常が出るなどの危険性もあります。
性感染症の診断があった際には必ずパートナーの方も検査を受けるようにしてください。また、お互いに完治させないと、パートナーとの間で感染を繰り返すピンポン感染といった事態も起こりますので、完治の診断が出るまで医師の指示に従って治療を続け、その間、性行為は控えるようにしてください。
男性更年期
女性の更年期障害は多くの方に知られていますが、近年男性にも更年期障害が存在することが認められるようになってきました。これは加齢によって男性も男性ホルモンの分泌が低下することや、身体機能がだんだんと変化してくることによるものと考えられています。
症状は大きく身体症状、精神症状、性機能障害に分けることができます。
身体症状では、ほてりやのぼせ、冷え、頭痛、耳鳴り、めまい、動悸、肩こりや筋肉痛などの他、下痢や便秘といった胃腸症状、不眠や全身の倦怠感など多岐にわたります。
精神症状では、イライラ感や意欲の低下、不眠・過眠、不安感、抑うつ感などが起こります。
また、性機能障害では、性欲の低下、勃起不全などの症状が起こることがあります。
人により症状は異なりますが、重い場合うつ症状を併発発症してしまうこともありますので、一定の年齢になってもしかしたらと思う症状がある場合、いつでもご相談ください。
当院では、血液検査によって男性ホルモンの状態を確認することだけではなく、男性力ドックにより筋肉年齢、血管年齢や骨年齢を測定し、専用の問診票にご記入いただくことで診断を行い、ホルモン補充の方法や生活指導、運動指導、食事指導など適切な治療方針を提案しています。
男性更年期のセルフチェック
- このごろ性欲が無くなってきた
- 体力が低下してきたと感じる
- 身長が縮んできた
- けだるく元気がでない
- 怒りっぽくなった
- 毎日がもの悲しい
- 毎日の楽しみがなくなってきた