尿失禁・頻尿とは
排尿に関する症状は様々ですが、その中でも多い症状として頻尿や尿失禁があります。しかし、多い症状でありながらも、トイレにまつわる症状だけに、恥ずかしいといってなかなか受診しない方や、歳のせいだから仕方ないとあきらめてしまう方も多いように思います。
ところが、頻尿や尿失禁といった尿トラブルの多くは、泌尿器科医など専門の医師に相談し、適切な治療を受けることによって、改善していくことができる症状です。また、丁寧な診察を受けることによって、そうしたトラブルの裏にかくれていた重要な疾患を見つけだし、早期に治療ができたといった例もあります。
排尿について人に相談するのが恥ずかしいというお気持ちはよく理解できますが、それよりもかつての快適な日常を取り戻すことができる日を思って、思い切って当院までご相談ください。
尿失禁とは
尿失禁とは自分の意思に反して尿が漏れ出してしまうことです。尿は腎臓で作られて尿管から膀胱へ運ばれ、膀胱で一定の量が溜まったら、脳から「排尿しましょう」という指令が神経を通して伝達され、脳からの指令によって尿意を催し、トイレにいって排尿します。すると膀胱の筋肉が緊張して尿を出そうとし、尿道の不随意筋も緩んで排尿しやすいように準備します。しかし通常はトイレに行くまでは出てしまわないように随意筋でできた尿道括約筋は尿道をきゅっと締め付けて尿がトイレに入って排尿の態勢を取るまで漏れないようにします。この一連の流れのどこかに障害が起こったときに尿失禁が起こります。尿失禁は日常生活の質を大きく下げ、中には失禁を気に病んで外出しなくなることでさらに身体の活動性を失ってしまうケースもあります。この尿失禁は、高齢になり排尿機能の衰えや靭帯の緩みで起こることもありますが、適切な運動療法の指導や生活指導で改善することもあります。また適切なトレーニングを身につけることや適切な手術や内服加療により改善が可能です。当院では、そういった尿失禁の原因と種類を適切に診断し切らない低侵襲治療を提供しています。尿失禁は泌尿器科の適切な治療によって確実に症状を軽減できる排尿障害です。少しでも尿失禁の症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
頻尿とは
頻尿はその人にとって日常の排尿回数を大きく超えて尿意を催しトイレに通う状態を言います。
1日の尿の回数や量は人によって異なりますので、実際的には人それぞれの日常次第になりますが、一般的に言えば1日のうち睡眠時間を除く活動時間のうち8回を超えると頻尿とされていますが、人それぞれでいつもより尿意を催してトイレに通ってしまうという状態を頻尿としています。トイレが近いと言う状態はたとえば、映画館で2時間の映画を集中して観ることができない、会議中に何度か中座しなければならないなど、日常生活の質を大きく低下させます。しかしその状態を話すことには羞恥が伴い、人に相談しにくいことは理解できます。ところが、そうした症状は自分一人で悩んでしまうことによって、逆にトイレのことしか考えられなくなり、心因性の頻尿を起こしかえって症状を悪化させてしまうこともあります。頻尿も、適切な治療で確実に症状を低減できますので、一人で悩まず、いつでもお気軽にご相談ください。
尿失禁・頻尿の原因
排尿に関する症状は、尿を溜めておく機能の障害である蓄膿障害、尿を排出する機能の障害である排出障害、排出した後に起こる排出後障害などに分類できます。尿失禁と頻尿もこれらのどれかの原因によって起こっています。ここではその原因についてそれぞれ説明していきます。
尿失禁の原因
尿失禁には、4つの発生パターンとそれが混合して起こるパターンに分類して考えることができます。発生のパターンごとに原因が異なります。
腹圧性尿失禁
くしゃみや咳をした時、重い物を持とうと力を入れた時などお腹に力が入る動作をした時に尿が漏れてしまうパターンの尿失禁が腹圧性尿失禁で、多くの場合女性に発症します。
原因は出産や加齢などによって骨盤底筋群がダメージを受け、緩んでしまうために尿道を締め付けられなくなってしまうことです。それに特有の直線的で短い尿道の構造が加わって女性に起こりやすいと考えられています。
切迫性尿失禁
急に激しい尿意が起こり、トイレまで保たずに尿が少し漏れ出てしまうパターンが切迫性尿失禁です。過活動膀胱など、脳から膀胱までの神経経路に何らかの異常が起こっているケースなどが原因として考えられます。女性に多いタイプの尿失禁ですが、男性でも発症することもあります。
溢流(いつりゅう)性尿失禁
膀胱までは正常に尿が送られていて、尿が溜まった状態になっていても、尿道が腫瘍などで圧迫され、尿が出せなくなる尿閉によって、溜まった尿が勝手に少しずつ無理矢理尿道から溢れだしてくる状態が溢流性尿失禁です。
前立腺肥大症によって尿道が圧迫されることがあるため、男性に多い症状ですが、女性にも発症することがあります。
機能性尿失禁
尿路の機能には問題が無く、ケガや障害などの運動機能の異常によってトイレにたどりつくまでに時間がかかってしまい尿失禁するといったパターンや、認知症などでトイレに行くという概念が無くなったりトイレの場所がわからなくなったりするようなパターンが機能性尿失禁です。
混合型尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁は原因に共通する所があるため、混合してあらわれることがあります。
頻尿の原因
頻尿には以下のような原因が考えられます。
過活動膀胱
尿意は通常、膀胱に一定量尿が溜まると、膀胱の尿量センサーが働き、脳に信号を送り尿からのフィードバックによって膀胱の平滑筋が収縮すると同時に、尿道の筋肉が緩み排尿しようとします。この流れのどこか障害が起こることで、膀胱にまだ尿が少ししか無い状態で膀胱が収縮して強い尿意を感じてしまうのが過活動膀胱です。
急に起こる激しい尿意(尿意切迫感)、トイレまで間に合わず漏れ出てしまう切迫性尿失禁などの症状とともに、我慢できず何度もトイレに起きる頻尿の症状があらわれます。
原因は脳から脊髄を通って膀胱に至る神経系統の障害、膀胱炎、男性では前立腺肥大症などの他、加齢やストレスなどの心理的要因、これといった器質的な疾患が無い特発的なものなど様々です。
残尿
膀胱の収縮力が弱い、尿道が狭くなって尿が出しにくいなど様々な理由から、尿を出し終わっても膀胱内に尿が残ってしまうのが残尿です。残尿量が増えると膀胱がいっぱいになるまでの時間が短くなり頻尿があらわれます。また、長期間残尿が溜まった状態が続くと膀胱は縮む時間が無くなり膀胱の筋肉は虚血(血が足りない状態)の状態となります。膀胱は比較的虚血には強い臓器ではありますが、24時間ずっと血が足りないと筋肉は線維化を起こし広がりずらく、溜めずらい膀胱(低コンプライアンス膀胱)となり、刺激を受けやすい敏感な膀胱になります。長期化すると低圧膀胱(圧力の弱い膀胱)と呼ばれ膀胱の健康を損ないます。
多飲多尿
様々な原因から、水分を病的にたくさん飲んでしまう多飲によって、作られる尿量が増えてしまう多尿が起こります。多尿になることで排尿回数も増え頻尿となります。
多飲多尿は個人差もありますが、一般的には1日の飲水量が3Lを超えているかどうかで判断します。標準的な成人の1日飲水量は体重×20-25mlとされています。多飲となる原因としては糖尿病、薬剤による口渇、精神的なストレスなどの他、身体の水分調節機能の障害による尿崩症なども考えられます。
心因性頻尿
プレゼンテーションの前や舞台に立つ前など、緊張した時にトイレに行きたくなることがあります。そのパターンが繰り返されると、日常的にもトイレの事ばかり気にかかってしまうようになり、頻尿症状があらわれる事があります。排尿機能そのものには問題がありません。また、心理学の研究では、排尿を我慢しているときの人の判断は間違った判断をすることも分かっており、大切な決定をするときには排尿をした後にするとよいかもしてません。
尿失禁・頻尿の治療
尿失禁の治療は、その原因や症状の軽重などによって大きく異なってきます。一般的にはトレーニングなどの理学療法から始め、薬物療法やレーザー機器、磁力波機器などを使用した治療、手術治療まで、その状態に合わせて最適の治療を行っていきます。
薬物療法
尿失禁や頻尿の症状に対しては、膀胱の異常な収縮を抑制する作用のある抗コリン薬や、膀胱の筋肉を緩めて尿道括約筋の緊張を高める作用のあるβ3刺激薬などを処方します。ただし、これらの薬剤には副作用もあり、特に前立腺肥大症に対しては使用に注意が必要なものです。泌尿器科の医師の指示に従ってください。
運動療法
尿失禁の原因の多くは、骨盤底筋の緩みや、膀胱の運動機能や知覚機能の障害によって生じます。そのため、尿意を感じた時に、1度少し我慢をして、我慢できる時間をだんだん増やしていく膀胱訓練、緩んだ骨盤底筋群を鍛え直す骨盤底筋体操などを行います。軽症の場合にはそれだけで症状が緩和することもあります。また症状が重い場合もその他の治療法と併行してこれらを進めていくことが推奨されています。
その他に、適量飲水指導など、生活習慣改善の指導を行うこともあります。生活習慣や水分習慣の改善は非常に効果的であり当院では、排尿チャートや生活習慣に問診により適切な指導を行っています。また運動療法としてもPNFや磁気治療と言った筋肉トレーニングやPNFを用いた骨盤底筋体操の指導を行っております。
その他
症状が重い場合や、運動療法、薬物療法で十分な効果を得られないようなケースでは、骨盤底部に磁力線を当てて筋肉や神経を刺激する治療や、特殊なレーザーを使って膣や尿道などの内部に中程度の熱を加え細胞を活性化する治療、メッシュのテープを埋め込んで膀胱を吊り上げたり、尿道を吊り上げたりする手術治療などを行うことがあります。