女性の泌尿器疾患とは
女性は尿道が直線的で短いといった身体の構造が、妊娠・出産の体験や体重の変化、年齢の変化などから、膀胱や尿道の変形や下垂をする性器脱の診断に重点をおいて診療をしています。軽い尿失禁は、出産を経験した40歳代の女性にも頻発していることが分かっています。しかしながら、泌尿器科へかかりにくいことや恥ずかしさから、ナプキンやパットで我慢してしまう女性も多くおられます。こうした事から細菌などが膀胱まで侵入しやすく、膀胱炎や排尿障害を起こしやすくなっています。
そのため当院では、服を脱がない尿失禁治療や切らずに治す尿失禁・性器脱治療を高周波磁気治療やレーザー治療により行っております。プライバシーにも最大限に配慮し、患者様それぞれのお悩みについて丁寧に、またご自分で話しにくいことは医師からスムーズにお答えいただけるよう優しく誘導するなど、環境を整えてお待ちしております。アンチエイジング治療もご用意をしていますので、アンチエイジングの傍らに排尿症状をご相談頂けるようにも心がけております。
泌尿器の症状は、放置しておくと、重篤な結果を招いてしまうこともあります。気になることがありましたら、どんなことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
女性の泌尿器科で
よくある症状
以下のような症状にお困りなら、我慢せず泌尿器科にご相談ください
- 何度もおしっこに行きたくなる(頻尿)
- 夜尿意で1回以上目が覚めてしまう(夜間頻尿)
- 何かの拍子に少し尿が漏れてしまう(尿漏れ)
- おしっこをする時に痛む(排尿時痛)
- 洗い物をしている時など、水の音や冷たいものに触ると激しい尿意を感じて我慢ができなくなる
- おしっこに血が混じっていた、拭いたときトイレットペーパーに血が付いた(血尿)
- 定期健康診断などの尿検査で、たんぱく質や尿潜血を指摘された
- 外陰部に違和感や不快感などを覚える
- 下腹部に痛みがある
- 性交時に痛む、濡れない、出血がある
- 膣のゆるみが気になる
など
女性の泌尿器科で診療対象となる主な疾患
膀胱炎
膀胱炎は膀胱に炎症が起きており、多くは尿道口から細菌が侵入することで起こります。特に女性は尿道が直線的で4㎝程度と短いため、尿道口から侵入した細菌などが膀胱に到達しやすく、膀胱炎を起こしやすいと言われています。急性膀胱炎では、頻尿、残尿感、排尿の終わりの方でツーンとした痛みを感じる、血尿などが特徴的な症状で、炎症が強くなってくると尿の濁りなども起こります。しかし、糖尿病などによって膀胱炎を併発した場合、このような自覚症状があらわれにくいこともあり、注意が必要です。
治療は抗菌薬による薬物治療が中心となりますが、感染している菌によって使用する薬剤が異なり、また同じ菌でも薬剤耐性を持つものが多く、尿検査・尿培養検査や血液検査によって原因菌を特定して投与する薬剤を決めることが重要です。
調子が改善すると、通院を止めてしまう方もいらっしゃいますが、膀胱炎は完治させないと再発や慢性化してしまうこともありますので、医師の指示にしたがって完治するまで治療を続けてください。
また、排尿痛があっても我慢せずに尿を出し切ること、水分を多めに摂って尿をたくさんつくること、トイレでの排尿習慣の見直しなども大切です。
尿を我慢する習慣のある方は膀胱炎にかかりやすくなっていますので、普段からあまり尿意を我慢しないようにすることが膀胱炎の予防となります。
骨盤臓器脱
骨盤臓器とは、骨盤内にある子宮、直腸、膀胱といった臓器のことです。通常、骨盤臓器は骨盤底筋と呼ばれる筋肉群や腱、靱帯などによって支えられています。ところがこの骨盤底筋や靱帯などが出産や加齢などによって弱ってしまい、骨盤臓器を支えられなくなることがあります。だんだん下がってきた子宮や膀胱、直腸などの内臓が、膣内に飛び出し、最終的には膣外まではみ出してくるようになるのが骨盤臓器脱です。初期の症状としては、お風呂で洗ったときやトイレで拭いた時にぽっこりと丸いものに触れるなどで気づくことが多く、進行して膣外に臓器が飛び出すようになると、歩行に障害が起こったり、出血したりといった症状の他、排尿困難など尿や便に関する症状も起こるようになります。また、長時間の立ち仕事のあとや夕方近くになり症状が出現しやすくなります。
治療は軽症であれば、骨盤底筋を鍛える体操や器具を使って下がってくる内臓を支えるといった保存療法を行います。当院では、骨盤底筋群体操を進化させ、高周波磁気治療やPNF療法を組み合わせた独自の骨盤底筋体操を提案しています。また、重症化して生活に支障が出ているようであれば切らずに治すレーザー手術も検討が可能です。少しでも症状を感じる方はご相談ください。
過活動膀胱
洗い物をして冷たい水に触った時、トイレの水音を聞いたときなど、尿が溜まってもいないのに、激しい尿意を催して、我慢できなくなるなどの状態は過活動膀胱の典型的な症状の一つです。本来は膀胱に尿が溜まった状態で尿意を感じるのですが、何らかの障害によって膀胱が過剰に活動してしまい、尿意切迫感や頻尿、トイレに間に合わず漏らしてしまう切迫性尿失禁などが起こります。原因としては、脳から膀胱に至る神経系統の疾患による神経因性のもの、また加齢によって骨盤底筋が緩み膀胱に影響を及ぼすなど特発的なものなどが考えられます。最近では、膀胱の血液の流れが悪いことで起こるとも考えられています。治療は、軽症の場合、骨盤底筋体操や膀胱訓練といったトレーニング、適量飲水や行動療法などの指導などを行います。
日常生活に支障を来すような中等度の場合には、薬物療法や高周波磁気治療を、高度で難治性の過活動膀胱には、膀胱内ボトックス注入療法も行う事が可能です。こうした症状のお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
尿道カルンクル
女性の尿の出口である外尿道口付近にできる米粒から大豆大程度の大きさの良性の腫瘍が尿道カルンクルで、多くは外尿道口の後(肛門側)にできます。
無症状のことも多いのですが、時に腫瘍からの出血や、陰部の痛み、尿が出にくいといった症状が起こることもあります。
軽症であれば、ステロイド軟膏を塗布することで改善が期待できますが、出血などによって日常生活に支障があるようなケースでは、手術によって摘除することも検討致します。
閉経関連性器尿路症候群
(GSM)
女性は閉経によって、ホルモンのバランスが大きく変化し、特に女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が大きく低下します。それによって様々な障害が起こることがありますが、特に性器や尿路に障害が起こる状態を閉経関連性器尿路症候群と言い、英語のGenitourinary syndrome of menopauseの頭文字をとってGSMと略称されることもあります。症状としては陰部の乾燥や灼熱感、痒み、臭いなど性器関連の症状、頻尿や過活動膀胱のような症状、尿漏れ、排尿時痛といった尿路の症状などの他、性交時の痛みなど性交渉の際の症状など様々です。原因は、エストロゲンの低下によって起こる膣や外陰部などの性器や膀胱、尿道といった下部尿路の萎縮にあると考えられています。
症状は様々ですので、患者様の状態にあわせて、骨盤底筋体操やホルモン薬、保湿剤などによる薬物療法、漢方療法、レーザー治療などから適切なものを選んで治療方針を提案していきます。
尿失禁
日本泌尿器科学会では尿失禁を「自分の意思に反して尿を漏らしてしまうこと」と定義づけています。尿失禁は40歳を超えた人、特に女性に多く、日本では4割以上の女性が尿失禁を体験しているという統計があります。
尿失禁は、その原因によって「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」という4つのタイプに分類されています。
「腹圧性尿失禁」は、重たい荷物を持ち上げる、子供に抱き付かれる、走る、跳ぶといったお腹に力がかかる状態で起こるもので、女性の尿失禁の中で一番多いタイプです。男性より女性に多く、体重増加や出産・加齢などを契機に尿道を締める筋肉・靭帯や骨盤の底の筋肉が衰えることが原因だと考えられています。
「切迫性尿失禁」は、尿意を感じてから排尿に至る過程を司る脳に何らかの異常が生じたり、膀胱自体や膀胱周囲の臓器の病気によって膀胱が刺激されたりすることによって引き起こされることもあります。膀胱に尿が溜まりきっていないのに激しい尿意を催し(尿意切迫感)、我慢できずトイレに入るまでに尿を漏らしてしまう状態を切迫性尿失禁と言います。この「尿を我慢しきれない」感じや状態が生じる原因は、脳血管障害や膀胱の虚血(膀胱に血液が足りない状態)からくる場合など、原因が明らかなこともありますが、はっきりとした原因が分からない状態で症状が出現していることもあります。しかしながら、こうした尿意切迫感や失禁は、日常生活に大きな支障をもたらすばかりか、高齢者では、夜間転倒や骨折の原因としても知られています。また、パーキンソン病や認知症でもこうした切迫性尿失禁が発症していることが分かっており、身体能力の低下や認知能力の低下により失禁してしまっていると思いこまずに診断を受けることも重要です。
「溢流性尿失禁」は、尿を出そうとしても出せないために、膀胱が満タンとなり溢れて漏れ出てしまう状態を言います。尿を出そうとしても出せない原因は、男性の場合は、膀胱の下にある前立腺が「前立腺肥大」を起こしたり、「前立腺がん」などにより出口が閉塞していることで起こります。他にも「糖尿病」や「大腸がん」、「子宮がん」の手術後に膀胱の知覚をつかさどる神経にダメージが生じた場合に神経因性膀胱となり排尿の感覚や収縮力が弱くなることでも起こります。また、女性の場合は良性腫瘍の「子宮筋腫」や出産や加齢、肥満が原因となって、子宮や膀胱を支える骨盤底筋がゆるみ子宮や膀胱が体外に飛び出る「子宮脱」や「膀胱脱」などにより尿道の変位や圧迫、閉塞が原因となっています。残尿が多くなり溜まった尿に細菌が繁殖することで尿路感染症をおこしやすくなります。残尿が多量に溜まると腎臓へ尿が逆流し、菌が腎臓に逆流を起こしたり、水腎症(腎臓が腫れた状態)が長く続くと、腎機能障害や腎不全を起こすこともあります。
当院では、こうした「溢流性尿失禁」に対して、超音波検査、台上診等で子宮脱・膀胱脱検査や尿道の動きを調べる検査(尿道過可動:Qチップテスト)、内視鏡検査等での診断や膀胱やの力や尿道の抵抗を調べる尿道・膀胱内圧測定を行うことがあります。当院では治療として、前立腺肥大症に対する日帰りの低侵襲治療や膀胱脱に対する日帰りの低侵襲レーザー治療が可能であり、診察により治療の適応を検討致します。
「機能性尿失禁」は、排尿機能そのものに問題はないのに、身体がうまく動かせないなどの運動機能や認知機能の低下により、尿意の発生に合わせてトイレに行って排尿するという一連の排尿行動ができなくなることで尿失禁してしまう病気です。具体的には、脳梗塞後遺症による麻痺によってトイレまで歩くことができない、衣類を脱ぐのに時間がかかってしまう、認知症のためトイレを認識できなくなる、などが原因として挙げられます。機能性尿失禁は、“排尿行動”に支障をきたすことで起こるため、歩行に支障がある方は、トイレまでの導線の確認や認知機能の低下による場合は、生活に適合した排尿環境を整えることも重要です。また、こうした、加齢や身体能力に起因する機能性尿失禁は、他の原因の尿失禁と合併して生じることも少なくありません。このように、機能性尿失禁は、身体的な症状によって引き起こされ、排尿行動に支障をきたす状態です。特に高齢者では、排尿機能の異常と機能性尿失禁が同時に生じることがよくあります。
私共は、認知症やパーキンソン病の方でも、機能性尿失禁のみではなく、過活動膀胱からくる切迫性尿失禁症状により排尿の失敗をしてしまうことにも注目しています。『年だから』『認知があるから』『体の動きが悪いから』と諦めないでください。
当院では尿失禁の治療として、尿道や膣への最新レーザー治療、骨盤底トレーニングとしての服を脱がない最新磁気治療や投薬、PNF(神経促通療法)を組み合わせた新しい骨盤底筋群体操、ボトックス治療などで尿失禁は解決を解決していきます。お困りの方は、まずは、一度診断を受けてみてください。ぜひお早めにご相談ください。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、今までは原因不明の繰り返す膀胱炎症状として治療されていたものに、特徴的な蓄尿時の膀胱痛などが生じることを見出され、膀胱内の傷(潰瘍病変)により痛みが生じていることが分かってきました。1915年にHunnerが膀胱痛などの症状と膀胱に潰瘍を有する症例を報告したのが、ICの最初とされています。その潰瘍病変はハンナ潰瘍と呼ばれ、ICは稀で特殊な疾患という認識が定着しました。しかし、ハンナ潰瘍(以下 ハンナ病変)がなくても類似の症状を示す症例も多く観察されるようになり、また,他の疾患でも類似の症状を呈する場合があることが分かってきました。このため、IC/BPS(BPS:Bladder Pain Syndrome膀胱痛症候群)の疫学調査が行われてきています。欧米での調査によると、1975年にOravistoがフィンランドでのICの罹患率は人口10万人あたり10.1人と報告しています。また、米国では、1987年にHeldらが行ったアンケート調査によると、全米に少なくとも43,500人のIC患者が存在し、類似の症例を含めると217,500人の患者が存在する可能性が報告されています。
では、アジア地域ではどうでしょう。
韓国の人口ベースの集団研究によれば、女性のICの有病率は0.26%であり、10万人あたり26人との報告があります。また、台湾でのIC患者は10万人あたり22人(0.022%)と報告されています。日本におけるIC/BPS に関する疫学調査によると、罹患率は0.01〜2.3%の範囲にあり、女性の方が男性の約5倍の割合で罹患率となっています。現在、国内で治療を受けている患者数は約4,500人(0.004%)で、これは全人口の10万人あたり4.5人と推定されています。
間質性膀胱炎は、通常の膀胱炎と異なり細菌などに感染していないのにも関わらず、膀胱の粘膜に炎症が続く疾患で、何らかの原因によって膀胱の尿路上皮が障害され、尿中の成分が膀胱壁を刺激するために起こるのではないかと考えられています。尿路上皮の障害の他にも、知覚過敏や免疫異常などが関連している可能性が指摘されています。また、香辛料を多く摂る人や、コーヒー、紅茶などを多く飲む人は症状が強くなる傾向があります。
2019年版の間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドラインでは、「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」(Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome: IC/BPS)は、「膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛,圧迫感または不快感があり,尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い,混同しうる疾患がない状態」としています。このうちハンナ病変(図)のあるものをハンナ型間質性膀胱炎または間質性膀胱炎(ハンナ型)(Hunner type IC: HIC),それ以外を膀胱痛症候群(BPS)としています。(この辺は定義のため他と同一でも多少仕方ないと思います。)間違えやすい疾患には、がんや膀胱炎などの尿路感染症、尿道結石や膀胱結石、過活動膀胱などがあります。原因は不明ですが、間質性膀胱炎(ハンナ型)では、自己免疫学応答による炎症反応が重要と考えられています。主な症状は、「膀胱痛」「尿意亢進」「頻尿・夜間頻尿」「残尿感」などがあります。膀胱痛は、蓄尿時に膀胱が膨らんだ時や寒冷刺激や刺激物(香辛料、アルコール、カフェインなど)や精神的なストレスなどで増悪します。痛みが周囲に広がることもあり、症状が強いと、日常生活に多大の障害が生じます。
中高齢の女性に多くみられ、過敏性腸症候群、シェーグレン症候群、線維筋痛症などを合併していることもあります。
診断としては、内視鏡検査と症状で診断を行います。膀胱の内側にハンナ病変がある場合は間質性膀胱炎(ハンナ型)、ハンナ病変が見られない場合は膀胱痛症候群となります。
治療方法は、対症療法としての生活指導が重要です。精神ストレスの緩和、食事指導(酸性飲料・コーヒー・香辛料・アルコール・柑橘類などの摂取を避ける)、定時的な排尿(膀胱が充満する前に時間を決めて排尿する)、膀胱訓練(膀胱に尿をためる訓練)などが症状緩和に有効です。尿意を感じると痛みが生じますが、水分摂取を制限してしまうと尿が濃縮されて、症状が悪化することがあるので、むしろ適切な水分量の摂取により一定の尿量を確保することが重要です。
内服治療薬としては、鎮痛薬、抗アレルギー薬、抗うつ薬、免疫抑制剤などが使用されます。
また、膀胱内へ薬物を注入する治療法もあり、主にヘパリン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ステロイドなどが使用されます。
他の治療法としては、内視鏡を使用した膀胱水圧拡張術があります。膀胱を拡張することで症状の緩和を図ります。ハンナ病変が見られる場合には、経尿道的内視鏡下で病変部を電気焼灼することもあります。
膀胱水圧拡張術やハンナ病変の焼灼術により、約半数の症例で症状の寛解が期待できます。しかし、長期的な寛解は一部の症例に限られ、多くの場合、再治療や追加治療が必要となります。まれですが、症状が消失し、数年以上の長期的な寛解が得られる方もいます。
いずれの治療にも抵抗性で症状が強い症例に対しては、膀胱全摘術と尿路変更術が行なわれることがまれにあります。
重症度基準(日本間質性膀胱炎研究会作成)
重症度 | 基準 |
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重症 | 膀胱痛の程度*が7点から10点 かつ 排尿記録による最大一回排尿量が100ml以下 |
中等症 | 重症と軽症以外 |
軽症 | 膀胱痛の程度*が0点から3点 かつ 排尿記録による最大一回排尿量が200ml以上 |
膀胱痛の程度(0-10点)の質問
膀胱の痛みについて、「全くない」を0、想像できる最大の強さを10としたとき、 平均した強さに最もよくあてはまるものを1つだけ選んで、その数字に○を付けてください |
---|
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 |
当院では、ボツリヌス毒素の膀胱内注入療法や磁気治療も行うことが可能です。水圧拡張術は、診断と治療を兼ねて行う治療です。入院麻酔が必要ですが、半数以上の方に有効です。当院医師は、大学病院での手術も行っているため、大学での治療の提供が可能です。いずれの治療を行った場合も少し長めにゆっくりと経過をみせて頂く必要があります。
腎機能障害
腎機能障害は何らかの疾患によって、腎機能が低下している状態のことで単一の病名ではありませんが、どのように発症するかによって、急性腎障害と慢性腎障害とに分けて考えられています。以前は腎機能が低下してしまった状態を指して腎不全と呼んでいましたが、近年では腎機能が不全に至る前の軽症の段階も含めて、腎障害と呼ぶようになっています。
急性腎障害は、様々な原因から急激に腎臓の機能が低下してしまうことで、尿が出にくくなったり、まったく尿が出なくなってしまったりするのが主な症状です。原因は腎臓への血流が妨げられて起こる腎前性のもの、腎臓機能そのものに問題があって起こる腎性のもの、膀胱から尿道への尿の流れに問題がある腎後性のものに分けて考えられており、急性腎障害の場合は、それぞれの原因疾患に従って適切に治療を行うことで腎機能の回復が期待できます。
一方、慢性腎臓病は何らかの機能障害によって腎臓の濾過機能が3か月以上低下している状態が続いていることで、英語のChronic Kidney Diseaseの頭文字からCKDと呼ばれることもあります。初期には自覚症状がほとんど無く、ある程度進行すると尿量が増える、全身に倦怠感が出る、むくむといった症状があらわれます。このころになると、治療を行っても腎機能の回復が難しく、人工透析になることもあります。
少しでもこれらの症状を覚えることがあったり、違和感を覚えたりする場合には、早めにご相談ください。
腎盂腎炎
腎臓の腎実質で作られた尿を一時溜めて尿管に送り出す腎盂といわれる部分が、主に細菌感染などによって炎症を起こしている状態です。尿路結石が尿管に詰まった状態で尿が逆流することでも起こりますが、多くの場合、外尿道口から侵入した細菌が膀胱に炎症を起こし、完治させないままにすることで、尿管を逆流して腎臓まで至ることで発症します。腎盂腎炎を起こすと、風邪の症状が無いのにも関わらず38℃以上の高熱が出て、吐き気や嘔吐などが起こり、さらに排尿痛、頻尿、残尿感といった排尿に関わる症状があります。治療は抗菌薬などの内服や重症の場合は点滴などを行うこともあります。
重症化すると、腎盂に長時間尿が溜まったままになる水腎症を起こすことがあり、そのまま進行すると敗血症となって生命に危険が及ぶケースもありますので、入院治療となります。
尿路結石
尿の成分中のミネラル分などが結晶化してできる石のようなものが尿路結石で、主に腎臓、次いで膀胱にできます。結石は腎臓にあるうちはほとんど無症状ですが、何らかの原因で尿管や尿道に降りてきて詰まった場合、排尿障害、背中や脇腹、下腹部などの強い痛み、血尿、頻尿といった排尿症状、発熱、吐き気や嘔吐などといった症状があらわれます。
膀胱がん
膀胱にできる悪性新生物が膀胱がんです。多くの場合、膀胱の表面を覆う尿路上皮で発生し、進行が膀胱上皮で留まっている筋層非浸潤性膀胱がんと、進行が筋層以下まで至っている筋層浸潤性膀胱がんに分類されています。筋層浸潤性膀胱がんは悪性度が強く転移や浸潤の可能性も高い傾向があります。
いずれのケースでも、初期にはほとんど症状が無く、症状があらわれるようになっても排尿時痛や頻尿など、他の尿路疾患と同じようなものですが、特徴的な症状として、痛みも何もないのに突然起こる血尿があります。
血尿が見られた場合には、受診するようにしてください。
腎臓がん
腎臓がんは腎臓の中で尿を作る働きをしている腎実質に発生するがんで腎細胞がんとも言います。およそ2対1と男性に多いのですが女性でも10万人に15人程度の割合で発症するという報告があります。なお、腎臓内でも腎盂にできるがんもありますが、これは腎盂がんと言い、腎細胞がんとは別の疾患になります。
腎臓がんの早期ではほとんど自覚症状ありませんが、進行すると背中や腰の痛み、腹部にしこり、血尿といった症状があらわれます。
治療は、初期なら手術によって完治が可能です。しかし、進行すると転移することが多くなり、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などといった治療薬などによる化学療法が主な治療法となります。
当院では、腎臓がんが疑われるような症状を認めると、超音波検査を行い早期発見に努めております。なお、治療が必要な場合は、連携する高度医療施設に紹介して、スムーズに治療を受けることができるようにしております。
神経因性膀胱
膀胱は腎臓から送られてきた尿を溜めておく蓄尿機能とある程度量が溜まった時に尿を排泄する排尿機能を持っています。通常は、適切な量を溜め、排泄時には膀胱のすべての尿を排出して膀胱を空にします。
この蓄尿機能と排尿機能の切り替えを機能は、脳から脊髄を通って末梢に至る神経系統でコントロールされています。
この経路のどこかで障害が起こると、蓄尿機能と排尿機能の切り替えがうまく働かなくなり、尿を溜められない、溜まっても排出するためのサインが出ない、必要以上頻繁に尿意が起こる、全部出し切らないのに尿が残ってしまう、尿意を我慢できず漏らしてしまうといった症状があらわれます。これが神経因性膀胱です。
原因は脳や脊髄といった中枢神経計の障害や、糖尿病などによる血行障害から末梢神経の働きが不全になるといった末梢神経の障害など様々で、また障害された部分によって症状も異なってきます。まずは様々な検査によって尿路の原因疾患が除外された場合、神経系統のどこで障害が起こっているかをつきとめることになります。
原因となっている神経障害の箇所や症状次第で治療法は異なりますが、内服や膀胱注入などの薬物療法や骨盤底筋体操、排尿訓練など様々な方法を検討します。
なお、近年この疾患は神経因性下部尿路機能障害(NLUTD:Neurogenic Lower Urinary Tract Dysfunction)と呼ばれることもあります。
性感染症
性感染症は、性行為によって感染するクラミジア感染症、淋病、梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIV感染症(AIDS)などの総称です。性行為とは性器同士の接触だけではなく、口腔や肛門、手などによる行為も含まれますので、男性にコンドームを着けてもらうなどの感染対策は重要です。
女性の場合、主に急性の膀胱炎を起こすことが多く、排尿時痛や血尿、残尿感、外尿道口から膿や粘液が分泌されるなどの症状があらわれますが、男性の場合の急性尿道炎などと異なり、自覚症状があまりあらわれないケースも多く、気づかないうちに慢性化してしまうことがあります。気づかないうちに慢性化すると、感染を拡げてしまうだけではなく、不妊などに繋がることもあり、また妊娠した場合赤ちゃんに移してしまうこともありますので注意が必要です。性行為のあった数日から数週間のうちに少しでもいつもと異なる症状があらわれたら、受診するようにしましょう。
また、検査によって感染が判明した場合には、必ずパートナーの方も受診して検査をしてもらうこと、症状がなくなったからと言って完治したわけではないため、必ず医師の許可が出るまで治療を続けることなども大切です。