性交痛とは
性交痛とは、文字通り性行為の始めやその最中に感じる痛みのことです。いつも痛みを我慢しているような状態になると、性行為そのものが怖くなってしまい、性行為を避けるようになることがあります。早めに原因を探り、治療をしましょう。
性交痛
心配のいらない性交痛・受診するタイミング
入り口が痛い
性行為を始めようとして、挿入する際に膣口周辺が痛む場合は、疾患の心配はあまりありません。
- 前戯が不十分で、まだ濡れていないのに挿入しようとした
- 無理な体位の性行為や、動きが激しすぎる場合など
- 膣や外陰部の皮膚が加齢などの原因で薄くなってしまい、傷がつきやすい
- 膣周辺の筋肉が衰えてきて弾力がなくなってきた
といった物理的な問題に加え、不安や落ち込みなど精神的な問題がある場合にも、濡れ方が不十分になることや、精神的な焦りで痛みを感じるようなこともあります。
腟の中がヒリヒリと痛い
ペニスが挿入されてから、行為を続けているうちに膣の内部に痛みを感じるケースでは、以下のような原因が考えられます。
- 膣が狭く十分拡がらない
- 男性のペニスが大きすぎる
- 膣口は濡れていたが、内部までは十分濡れていない
- 膣の分泌物があまり分泌されなくなった
- 膣粘膜が加齢などで薄くなって傷つきやすくなっている
- 加齢などで膣周辺の筋肉が衰えて柔軟性が足りなくなった
- コンドームの素材に対するアレルギー
奥が痛い
しっかりと濡れていて、挿入には問題無いが、膣の奥が痛くなるといった場合には以下のような原因が考えられます。
- 後背位などの体位で性行為を行うと奥が痛くなる
- 奥まで挿入しすぎることや、激しすぎるピストン運動など、行為の仕方によって奥が痛くなる
どこが痛い? 性交痛の原因
膣の入り口付近が痛い
膣炎や外陰炎といった膣周辺の炎症で膣口周辺が痛む場合もあります。多くの場合、細菌感染によって、外陰部が荒れてしまうことで入り口周辺が痛みます。ストレスや疲労といった精神的な問題で抵抗力が衰えて感染を起こしているようなこともありますが、性感染症が原因のこともありますので、炎症を感じる場合はお早めにご相談ください。
その他の原因としては、処女膜が厚くて膣口が狭くなっている処女膜強靱症や、以前の性行為の際のトラウマなどで痛みを感じるようになってしまうケースなどもあります。
炎症や感染症
外陰部や膣、膣の両側にある分泌腺などが炎症を起こしているケースや性器ヘルペスによって痛みが生じる他、女性は尿道の炎症によっても性交痛を感じることがあります。
炎症が起こっているケースでは性感染症が原因のケースも多いため、適切な診断・治療を受けるようにしましょう。
処女膜強靭症
生まれつき処女膜が肥厚していると、膣の入り口が狭く硬くなって挿入時に激しい痛みを感じ、挿入できないこともあります。処女膜が厚い場合、必要に応じて手術を提案させていただきます。
外陰部や膣粘膜の萎縮
慢性的な炎症や繰り返す炎症などによって、外陰部の皮膚や膣粘膜が萎縮を起こしてしまうことがあります。また、閉経時のエストロゲンの分泌の低下によっても同様のことが起こります。治療としてはヒアルロン酸のジェル塗布などを行います。閉経後の方は膣錠(膣坐薬)や内服薬で女性ホルモンを補充することもあります。
女性ホルモン「エストロゲン」の働き
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは主に卵巣で生成されています。妊娠の準備として子宮を肥厚させる働きの他、女性特有の丸みのある身体つきを作る、骨量を維持する、肌や粘膜などの張りや潤いを保つといった役割をします。
閉経の5年ぐらい前から、このエストロゲンの分泌はゆらぎながら低下していき、閉経の5年後ぐらいまでその影響が続き、女性の身体に様々な影響を与えます。
性交痛を起こす原因としては以下のようなものが考えられます。
- 膣の分泌液が少なくなり濡れにくくなる
- 膣が乾燥する
- 膣の周囲の組織が萎縮し傷つきやすくなる
更年期の女性が感じやすい性交痛の症状
更年期を迎えると、女性の身体は大きく変化し、心や身体にもそれに応じた変化が訪れます。
性交痛関連の変化では、
- 分泌液が少なくなってピストン運動の摩擦が痛む
- 挿入されることで出血する
- 心理的な要因によって、性的な興奮を得にくい
といった症状が起こることがあります。
痛みによって性交渉を楽しむことができなくなったり、心理的な要因によって性交渉をしたくなくなることもあります。
ホルモンのゆらぎによるこうした症状にはホルモン補充療法(HRT)が有効なこともあります。また膣の分泌物不足による性交痛には対症療法として、膣に潤いを与えるジェルやローションなどの使用も有効です。
体質
生まれつき処女膜が厚く膣口が狭くなるような状態の女性もいます。手術で処女膜を切開することで、膣口の柔軟性を取り戻し、その後ある程度のトレーニングによってスムーズに挿入を受け入れることができるようになります。
ラテックスアレルギー
ラテックスアレルギーがあると、コンドームの素材によっては膣内でアレルギーを起こすことがあります。
前戯が不十分である場合
急いで挿入しようと、前戯が足りないまま挿入すると女性は痛みを感じます。パートナーにそのことを伝えるのは難しいかもしれませんが、苦痛に耐えていては相互の満足を得ることはできません。話し合うことがベストですが、それが叶わない場合、ジェルやローションの使用も考慮すると良いでしょう。
出産後
出産によりホルモンバランスは不安定になります。そのため、膣や外陰部の粘膜が萎縮してしまい、膣分泌液が減少してしまうようなこともあります。適切な治療によって症状の改善が期待できます。
精神的なもの
過去の性行為に対する恐怖感といった精神的な要因から、性行為に対してネガティブになると、濡れない、緊張するなどの関係で性交痛を感じることがあります。
腟の奥が痛い
膣の奥が痛む時は、乱暴な性行為や体位の問題の場合もありますが、子宮や卵巣、骨盤内感染症といった疾患が隠れていることもあり、注意が必要です。
こうした疾患を放置してしまうと、治療が難しくなることや、不妊の原因となることがあります。少しでも異常を感じたら、お早めに当院までご相談ください。
性交痛の治療(対策)
インティマレーザー
挿入は可能であっても、行為を続けると痛みを感じるといったような症状の場合、膣周辺組織の萎縮や張りの低下による潤い不足が原因のことがあります。
こうした症状にお勧めの治療が、インティマレーザー/Vタイトニングです。インティマレーザーは特殊な波長のレーザー光を直接膣内に照射することで、身体への負担を最低限に抑えながら、膣周辺の組織の張りやみずみずしさを取り戻すという施術です。膣口に麻酔ジェルを塗り、専用のガラスチューブを挿入し、その中にレーザー機器の専用アプリケータを入れ膣内全体にレーザー光を照射し、内部の筋層に熱を加えて組織を活性化します。
潤滑液の使用
潤いのないセックスは女性の側の問題だけではなく、パートナーの側の問題も多々あります。お互いにコミュニケーションできればいいのですが、話合うのが難しい問題でもあります。そんな時に、ジェルやローションなどの潤滑液を使用することによって、安心感を得ることができ、リラックスしてセックスに望むこともできるようになります。また、いつもと違う雰囲気作りなどスムーズなセックスに役立つこともあります。
1人で練習をする
性行為で気持ち良さを得る部分や刺激に対する反応は、すべての人が同じというわけではありません。パートナーとの性行為で、お互いにそのことを伝え合うためには、実はかなりの身体の触れあいや言葉の触れあいといったトレーニングが必要です。そのためにもまずは自分がどうすれば気持良くなるのかということ自身の指や器具を使った自慰行為によりチェックしておくことが大切です。
体位を工夫する
女性も男性も性器の特徴は人それぞれです。そのため、スムーズなセックスができる体位も千差万別になります。お互いの性器の位置関係や、身長差などによって女性が性交渉時に痛みを生じることもあります。特に、後背位などは深く挿入されやすいため女性が膣奥で痛みを生じることがあります。女性が上になる体位なら自分で深さをコントロールしやすくなるなど、体位を工夫することで性交渉を楽しめるようにしてみましょう。