排尿トラブルの原因で男性特有の原因として考えられるのが、「前立腺肥大症」です。
前立腺とは男性だけにある臓器で、精液の一成分である「前立腺液」をつくる生殖器の一部です。
前立腺肥大とは、文字どおり前立腺が肥大してくる病気です。もともとクルミくらいの大きさの前立腺が、人によっては卵やミカン、ソフトボールくらいの大きさに肥大することもあります。
前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて狭くなることにより、おしっこのさまざまなトラブルを引き起こすことになります。
肥大する原因は、現段階ではまだはっきりとわかっているわけではありません。
しかし、前立腺の加齢に伴う成長は、これまでいわれてきた単なる血清アンドロゲンの増加や減少だけでは説明できなくなってきており、最近の研究では、前立腺内の男性ホルモンと女性ホルモンの比率や受容体の変化、前立腺内酵素(5AR)の変化などとの関連も指摘されてきています。
さらに男性ホルモン(テストステロン)の効果によりα1ーアドレナリン作動性受容体活性やホスホジエステラーゼ5型活性、Rhoーキナーゼ活性化、エンドセリン活性が起こることもわかってきています。
前立腺肥大症は、以下の3段階で進行します。
第1期・・膀胱刺激期
まだそれほど尿道が圧迫されていない段階で、トイレへ行けば膀胱は空になります。しかし、肥大した前立腺が膀胱や尿道括約筋を刺設することで、頻尿の症状が現れるようになります。
第2期・残尿発生期
尿道が圧迫されて尿が出にくくなり、残尿感が生じるようになります。尿が出きらなければ膀胱に尿が残るため、トイレへ行く回数が増えます。第2期の症状が進むと、急に尿が出なくなる「急性尿閉」や「尿路感染症」を引き起こすこともあります。
第3期…慢性尿閉期
肥大が進行して慢性的に尿が出づらくなると、「尿閉」という恐ろしい状態になります。尿をなかなか体の外に出せないのですから、膀胱はパンパンの状態が続き、伸び縮みするのも難しくなります。そして、膀胱にたまりにたまった尿が、圧迫された尿道から滴り落ちてきます。これが溢流性尿失禁で、第3期の代表的な症状です。
前立腺肥大症が第3期まで進行すると、尿をつくる腎臓にまで影響を与えるようになります。なぜなら、腎臓は、尿が排出される、されないにかかわらず、血液のろ過作業を行っているからです。尿の行き場がなくなり、腎臓に尿が逆流して機能不全に陥るのが、水腎症による腎不全(腎後性腎不全)です。
男性にとっては怖い病気である前立腺肥大ですが、残念ながら排尿の健康診断はありません。さらには、前立腺が大きくなっているかどうかを目で確認することもできません。
トイレに行く回数が増えた、残尿感がある、夜中にトイレで起きることがあるなどという人は、泌尿器科を受診してみてください。治療や生活習慣の改善で、進行を抑えることは可能です。
ちなみに薬剤以外の薬用成分として注目されているのは、ノコギリヤシ(セレノアレペンス)です。
有効性は、他の前立腺肥大症薬と比較すると同等または劣りますが、軽度および中等度の下部尿路症状(LUTS)である夜間頻尿、不快感の治療においてプラセボよりも明らかに高いことが報告されています。