【女性の頻尿と尿失禁】一部記事抜粋
尿漏れや頻尿など、何らかの泌尿器障害があるとされる日本人女性の数は600万人いるとされ、女性の全人口において約10%を占める。
女性の尿漏れや頻尿は、膣内環境や排便状態、出産歴、婦人科疾患治療歴などあらゆる要因が複合的に絡み合って起きているケースが多い。しかし、その中で実際に泌尿器科を受診しに来るのはほんの一握りだ。医師の診察のもと、早期治療に取り組む必要があるにもかかわらず、病院へ行くことに抵抗がある人が多く、長い間放置した結果、手術が必要な重篤な状態になってから来院する患者さんも少なくないのが現状。
泌尿器科において女性の発症頻度が高い病気として、尿失禁全体の約半数を占める『腹圧性尿失禁』や膀胱や直腸、子宮などの臓器の位置が下がってきて膣から外に出てくることで引き起こされる『骨盤臓器脱』、急に強い尿意がおきる『過活動膀胱』、残尿感や排尿後に痛みを伴う『間質性膀胱炎』があげられるが、それらはすべて40代から患者数が増加する傾向にある。にもかかわらず、若いころからずっと我慢していたという人も珍しくない。
泌尿器系の病気は医師の監督のもと、しかるべき処置を受けることが一番の薬で、放置すれば全身が蝕まれる可能性がある。
排尿は”健康のバロメーター”であり、尿漏れや頻尿の症状が出始めると、まず外出がおっくうになる。すると筋肉が衰えやすくなり、転倒や認知症のリスクが上昇する。特に70代・80代になると、過活動膀胱は夜間の転倒・骨折のリスクにもつながる。近年では排尿と寿命の関係についても研究が進んでおり、頻尿の人は体が虚弱状態になる『フレイル』や、身体機能が低下する『サルコペニア』になりやすいことが判明している。
更年期になるとホルモンの分泌が減少するが、代わってテストステロンが筋肉や骨、血液を作り、コルチゾールは免疫力を維持し、健康に重要な役割を果たす。ただしこのホルモンは睡眠中に作られるため、夜中にトイレに起きると分泌量は減少し、体が衰弱していってしまう。
加えて当然ながら夜中に何度も起きてトイレに立つと、睡眠不足になってともに疲弊するうえ、生活リズムも崩れる。実際、夜間多尿が2回になると死亡リスクが上がるというデータもあるほどだ。
小まめにトイレに行けば問題ない、年をとったら多少尿漏れするのは仕方がない、と症状を放置すれば、老後が一変する可能性もあるのだ。
排尿トラブルは老化で膀晄の柔軟性が失われることや骨盤底筋の緩み、生活習慣やホルモンの分泌など、複雑な要因が絡んでおり、早い段階であれば医師の診断のもと、生活リズムを整え習慣を見直すことで、大抵の場合は症状を改善できる。
また、骨盤底筋の緩みが原因なら、磁場の中で膀胱や骨盤底筋周辺に刺激を与えて鍛える「高周波磁気治療」(スターフォーマー)や骨盤底筋群を鍛えることに特化した「PNF療法」による新しい骨盤底筋体操が有効。また、切らずに治す尿失禁治療としてレーザーを膣内や外陰部に照射するインティマレーザーが応用され、日帰りの手術が可能となってきている。
尿失禁や夜間に2回以上トイレに起きるなど少しでも頻尿の症状があれば、泌尿器科で排尿後の残尿の有無を調べる「残尿測定検査」を受け、膀胱の健康状態をチェックしてみることを推奨。症状が重ければ、手術も選択肢に入ってくる。
「骨盤臓器脱であればリングぺッサリーの挿入や臓器を正しい位置に戻す手術が、腹圧時の尿漏れであれば、特殊なテーブを尿道の下に通して尿道を支える『TVT手術」や「TOT手術」が王道。
では、いざ病院で処置や検査を受けようと思ったら、何を基準に選ぶべきか。
『いい医師の条件は排尿の間題から体全体を診ようとすること』
患者さんの年齢や体質によって、それぞれ対処法が異なるため、ただ薬を処方して手術しても、体全体の状態を把握して治さないと、排尿障害を繰り返してしまう。患者さんの生活習慣やリズム、水分バランスや身体能力、筋肉量など体の状態をしっかり把握して、治療の組み立てや指導をする医師を選ぶことが重要だ。
~排尿は健康のバロメーター~
長寿を体現するために、丁寧かつ迅速にケアしていきたい。