あらゆる生活習慣病の入り口といわれる「肥満」。太っていることは、おしっこのトラブルにもさまざまな悪影響を与えます。
まず、太ると膀胱の柔軟性がなくなります。要因の1つは、太ると血管をサビつかせる活性酸素の量が増えるからです。太っている人は、ふつうの体形の人より食べます。食べるとそれだけ代謝活動が活発になるため、活性酸素の発生量も多くなります。結果、処理できなくなって、膀胱の細胞をサビつかせてしまうのです。
もう1つは、テストステロンの量が減少するからです。テストステロンの量は筋肉の量に比例しますが、太っている人はふつうの人より、脂肪が多く筋肉が少なめです。そのため、テストステロンの分必量が少なく、膀胱の柔軟性が低下するリスクが高いのです。
肥満がおしっこのトラブルに与える影響はまだまだあります。過剰なインスリンの分泌に交感神経が刺激され、尿意を感じやすくなります。インスリンとは、糖質を細胞のエネルギー源として取り込むために働くホルモンですが、肥満が進行すると効率的に利用できなくなります。それが「インスリン抵抗性」という状態です。それでも、太っている人は糖質をたくさん摂るため、なんとか糖質を処理しようと効率が悪くなっているにもかかわらずどんどんインスリンを分泌します。それが、勝胱を収縮させる交感神経を刺激するのです。また、脂肪細胞に含まれる炎症物質である「サイトカイン」が増え過ぎて酸化ストレスが強まり、一酸化素が減少して膀胱の柔軟性が失われます。
太っているとおしっこのトラブルを抱えるのは、構造的な問題もあります。内臓脂肪がつくことで膀胱や尿道が圧迫されると、尿意を抑えられなくなることがあります。
さらに、筋肉量が減って脂肪が増える「サルコペニック肥満」になると脂肪に水分がたまるようになり、その水分が寝るときに横になると重力の関係で血管内に戻り、夜間多尿につながります。
太らない食事法としてのおすすめは、ゆるやかな糖質制限です。ダイエットのための食事法はさまざまありますが、最も効果が高いといわれているのが、日々の食生活で摂る糖質を少なめにすることです。なぜなら、糖質こそ太る原因だからです。糖質とは、炭水化物に含まれている栄養素で、私たちの主食である白米やパン、好んで食べるうどんやラーメン、パスタなどの麺類、そしてついつい食べてしまう甘いデザートなどに多く含まれています。糖質を摂ると太るのは、インスリンによって細胞のエネルギー源として取り込まれた残りの糖質が、脂肪細胞に放り込まれるからです。つまり、大量に糖質を摂ると、それだけ脂肪細胞に蓄積されていくことになるのです。ただし、先ほどテストステロンの項で話したように、やせるからといって極端に糖質を制限するとおしっこのトラブルを招くことになります。太っている人は、まずは、いつも食べているごはんの量を少し減らす。そこから始めてみましょう。体が慣れてくると、半分くらいでもおなかが満たされるようになります。