前立腺肥大症で夜間頻尿になると、睡眠中のホルモン分泌が減ることでテストステロンも減少します。男性力は衰え、仕事や生活の集中力や熱意も失われやすくなります。
前立腺肥大症の飲み薬や食生活の見直しで、夜間頻尿などが克服されていれば問題はありません。
しかし、前立腺肥大症で一般的に処方されている「α1ブロッカー」では、前立腺肥大は小さくならないのです。
尿の勢いが悪いまま10年も20年も経過することで、膀胱の健康は損なわれます。それを防ぐために必要なのは、働きながらでも受けやすい治療の選択でしょう。そう考えて、私(斎藤)は今年7月、東京・代官山に泌尿器・日帰り手術クリニックを開院しました。
私は大学病院勤務時代から経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)という手術を数多く行っています。ホルミウムレーザーという医療機器で前立腺の内側をくり抜く治療法です。前立腺が大きく、根治を希望される人にはお勧めの手術で、今でも大学病院での手術と後輩への技術指導を行っています。しかし、手術は入院など多大な負担がありハードルの高い治療です。
当クリニックの日帰り治療は、2022年4月に保険適用になった「ウロリフト」(経尿道的前立腺吊り上げ術)と、同年9月に保険適用された「WAVE治療」(経尿道的的前立腺腺水蒸気治療)=上記画像=です。これらの最大の特徴は、5-10分の短時間処置で日帰り治療が可能なことです。
欧米では、すでに5年以上前から日帰り治療が普及しています。
ウロリフトは尿道からデリバリーハンドルという医療機器を入れ、糸のようなインプラントで前立腺をくくるようにして尿道を広ける治療法です。従来の前立腺を取り除く手術(TURP)の患者さんと比べて回復が早く、患者さんの満足度がはるかに高いと報告されています。私は当クリニックでウロリフトを導入する前、すでに40万人以上の治療実績のある米国の医療機関を訪問し、日帰り治療を行う足がかりにしました。
WAVE治療は、米国で開発された日帰りが可能な手術です。この治療は、肥大した前立腺を水蒸気で壊死(えし)させて小さくする治療法で3-5分程度で行います。熱変性した組織は1-3カ月で体内に吸収されて前立腺が小さくなります。膀胱の入り口付近に近い前立腺肥大では、WAVE治療がより効果を発揮します。
これらの治療は、在宅医療で入院が困難な人にも日帰りで行える可能性があり、多くの人の選択肢になりうる治療法だと私は思っています。