膀胱が痛い?
下記のような症状が、冷えた環境や尿の溜まったときに起きりやすくないですか?
また、刺激物を摂取したとき、精神的なストレスがかかったときにも悪化しやすくないですか?
頻尿や膀胱炎、過活動膀胱と思われ、治療していてもなかなか改善しない場合、膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)かもしれません。当てはまる場合、当院までご相談ください。
- 膀胱痛(膀胱が痛い)
- 頻尿(トイレが近い、何度もトイレに行く)
- 夜間頻尿
- 残尿感
- 膀胱炎が治らない
- 膀胱炎かと思ったが尿に異常がない
- 尿が溜まると下腹部が痛い
- 性交痛がある
- 排尿時(排尿後)に尿の出口が痛い
- 尿意切迫感(急に尿意が起こり我慢できない)
膀胱炎?過活動膀胱?
膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)かもしれません
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(Interstital cystitis/Bladder Pain Syndrome: IC/BPS)という病気をご存じでしょうか。だいぶ認知が広がってきたものの、未だに泌尿器科医の中でも知らない医師もいるかもしれません。
BPSは、原因不明で女性に多い、男女比は1:5程度だとされています。
認知度が低いこと、また、診断が難しいために膀胱炎や過活動膀胱炎、心因性頻尿、慢性前立腺炎などと診断されてしまうこともあります。
国定的に合意された定義はありませんが、日本においては2019年に膀胱鏡検査の結果で膀胱痛症候群と間質性膀胱炎を分けて治療方法を考えていこうということになりました。なお、間質性膀胱炎(ハンナ型)の一部(重症型)は、国の認定する指定難病となっています。
膀胱炎と膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)の見分け方
膀胱炎と膀胱痛症候群は、症状など類似点が多いことから勘違いされることもあります。通常の膀胱炎の場合、多くは細菌感染が原因で、抗生物質による治療にて改善します。しかし、膀胱痛症候群の場合、細菌感染は認められず、抗生物質による治療を行っても改善しません。また、尿検査を行っても、尿に異常はないといった特徴があります。
膀胱痛症候群の症状・診断
膀胱痛症候群の特徴的な症状は、膀胱に尿が溜まった時のみ生じる膀胱の痛みです。また、頻尿や慢性的な骨盤部の疼痛、膀胱の不快感も見られます。
診断は、膀胱鏡検査にて膀胱がんや膀胱結石、過活動膀胱、婦人科疾患など他の病気でないことを確認することでくだします。なお、膀胱鏡検査にてハンナ病変と呼ばれる病変が見られた場合、間質性膀胱炎(ハンナ型)となります。
膀胱痛症候群の治療
現在のところ、膀胱痛症候群の根治治療はありません。症状に応じて下記のような治療を行っていきます。
内視鏡手術(経尿道的手術)
萎縮して硬くなってしまった膀胱内に直接生理食塩水を注入し膀胱を拡張して柔軟性を取り戻す治療法です。痛みを伴うため、麻酔をしてから行います。ただし効果が長続きしないことがあり、その場合再度施術が必要になります。ハンナ型間質性膀胱炎の場合は、時に内視鏡的に電気メスでびらんした部分を焼灼します。
薬物療法
理学療法などであまり効果が得られない場合は、薬物療法を併用します。特に、三環系抗うつ剤と呼ばれるタイプの薬剤は痛みの軽減に効果があります。その他には抗ヒスタミン薬や比較的新しい抗アレルギー薬のトシル酸スプラタストなどが効果を発揮する場合があります。ただし間質性膀胱炎の場合、これらの薬剤は保険適用外になります。
塩酸アミトリプチリン
塩酸アミトリプチリンは三環系抗うつ剤の一種として知られている薬剤です。この薬は抗うつ剤としての働きの他に、夜尿症の薬としても処方されることがあるように、膀胱の緊張をゆるめて、膀胱の平滑筋を弛緩させる作用があります。
これによって、尿意切迫感や切迫性尿失禁などの症状を緩和するとともに、膀胱筋肉の緊張からくる膀胱痛を緩和する働きもあり、一時的に膀胱の緊張による精神的症状も緩和され、睡眠障害などの症状が軽減されることも期待できます。
抗ヒスタミン薬
間質性膀胱炎では、膀胱内に炎症や免疫反応などに作用する肥満細胞が多く見られることが特徴の一つです。肥満細胞には血管を膨張させたり痛みを起こしたりするヒスタミンが多く含まれているため、ヒスタミンの作用をコントロールするために抗ヒスタミン薬を処方することがあります。ただし、抗ヒスタミン薬は副作用として眠気を催す作用が強いことが知られており、自動車運転などの関係で服用できないこともあります。
漢方薬
疼痛の緩和や自律神経を整える目的で漢方薬を処方することもあります。よく使われるのは猪苓湯、五淋散、瀉肝湯などです。
膀胱内注入療法(膀胱の中に薬剤をいれること)
膀胱の内部に直接薬液を投与する方法の有用性も報告されています。人工透析時の血液凝固防止に使用されるヘパリンや、局所麻酔で使われる塩酸リドカインなどが使われます。ただし、効果は一時的であるため、水圧拡張術の補助的治療として、1~4週間おきに外来治療で投与する方法が一般的になっています。間質性膀胱炎によるこれらの薬の処方は、保険適用になっておらず、自由診療となります。
食事療法
様々な飲食品の中には、間質性膀胱炎や膀胱痛症候群の症状を強くしてしまうものがあります。酸性尿になりやすい食品、尿中にカリウムが大量に出てしまう食品、ヒスタミンや血管を収縮させるチラミンなどを多く含む食品など、口にしても良いもの、避けた方が良いもの、食べてはいけないもの知ってコントロールしていくことが大切です。
間質性膀胱炎では、膀胱粘膜を構成している物質の中でグリコサミノグリカンと呼ばれる多糖類の一種が障害されることで、粘膜の結びつきが弱まり、尿内の物質が膀胱粘膜より内側へと浸透しやすくなっているために知覚神経が刺激されて膀胱痛が起こります。
そのためそのような物質が含まれた食品によって症状が悪化することが知られています。
口にしてはいけない食品 | 避けたほうが良い食品 | 口にしても良い食品 | |
---|---|---|---|
果物 | グレープフルーツ、オレンジ、みかん、レモン、パイナップル、リンゴ、イチゴ、クランベリーとその果汁飲料 | スイカ、梨、ブルーベリー、桃、バナナ、干しぶどう、デーツ | |
野菜 | トマトとその加工品ピクルスなど酸味の強い漬物 | 玉ねぎ | ニンジン、かぼちゃ、長ねぎ、キャベツ、きゅうり、ブロッコリー、セロリ、コーンなどの酸味の強くない野菜、 |
乳製品 | ヨーグルト、サワークリーム | 熟成チーズ(カマンベールチーズ、ゴルゴンゾーラチーズ、チェダーチーズ、ブルーチーズなど) | 非熟成ナチュラルチーズ(モツァレラチーズ、クリームチーズカッテージチーズなど)、牛乳 |
飲み物 | 酒類、カフェインの多い飲み物(コーヒー、玉露、紅茶)、炭酸飲料、柑橘系果汁のジュース | 酸およびカフェイン抜きのコーヒー、紅茶、ハーブ茶 | |
調味料 | 酢、マヨネーズ、トマトケチャップ、香辛料の多い料理(中華、インド、メキシカン、タイ料理)、化学調味料、これらを使用したドレッシングなど | ハーブ、にんにく、香辛料の入っていないオリーブオイル | |
豆類 | 大豆、豆腐、納豆、味噌、醤油 | そら豆 | |
炭水化物 | ライ麦パン | 米、オーツ麦、パン、パスタ、芋類 | |
肉・魚 | 熟成、缶詰、塩漬け、燻製、その他の加工が施された肉や魚、アンチョビー、キャビア | マグロ、カツオ、鮭、青魚類、海老など | 牛肉の赤身、豚肉の赤身、皮を除いた鶏肉、ラム肉、白身の魚、卵 |
ナッツ類 | ほとんどのナッツ類 | アーモンド、カシューナッツ | |
その他 | クエン酸、人工甘味料、チョコレ―ト | ホワイトチョコレート |
膀胱訓練
膀胱訓練とは、尿意があってもできるだけ我慢をして、だんだん膀胱に溜めることができる尿量を増やしていく治療法です。しかし、間質性膀胱炎や膀胱痛症候群では、尿意を我慢して濃くなった尿が膀胱を刺激して痛みのもととなってしまいます。医師の指示に従い、適切な膀胱訓練をするように心がけましょう。当院では、磁気治療を使った膀胱訓練やPNF(神経促通療法:プロスポーツ選手が行う理学療法)の原理を応用し骨盤底筋のトレーニングを介しての訓練も行っています。